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第21話 不協和音

夢の中で、誰かが僕の髪の毛を撫でている。薄っすらと目を開けると、悠ちゃんがとても優しい顔をして、僕を見ていた。そして、僕をそっと抱き上げて、自身の胸に抱きしめる。僕の耳元で、「玲…、泣かせてばかりでごめん…、玲、玲…」と囁く声がする。その声が辛そうに聞こえたから、僕はとても小さな声で、「ゆうちゃん…大丈夫だよ…、でも、僕のそばにいて…」と呟いた。 悠ちゃんは、より一層強く抱きしめてきて、僕の頰に唇を当てた。そのまま悠ちゃんの唇が少しずつずれて、僕の唇に重なった。こんなにいい夢があるのかと、僕からも唇を強く押し付ける。悠ちゃんの舌が僕の唇を突ついたから、そっと口を開けた。そこから悠ちゃんの熱い舌がぬるりと入ってきて、僕の口内を動きまわる。驚いて逃げる僕の舌に舌を絡めて、強く吸い上げた。 「ふぁっ、んぅ…、あぅ…っ」 何だか恥ずかしい声が鼻から漏れるけど、夢だから仕方がない。僕は、必死で悠ちゃんの舌を追いかけて声を漏らし続ける。夢の中なのに、だんだんと息が苦しくなってきた。僕は悠ちゃんの胸を軽く叩いて、ようやく解放される。 銀糸を引いて離れていく悠ちゃんの唇を見つめて、ふわりと笑う。僕の口の端に垂れていたらしい唾液を悠ちゃんが舐めとった所で、僕の瞼がとろんと閉じかける。また深い眠りに誘われて、悠ちゃんの姿が白い靄に消えてしまった。 スマホの着信音に気付いて目が覚めた。リビングで寝てしまっていたはずなのに、なぜかベッドの上にいる。もしかして、悠ちゃんが帰って来て運んでくれたのかな、とぼんやり考えて、鳴り続けるスマホを思い出して手に取った。 「もしもし…?」 「玲?俺、拓真だけど。大丈夫っ?」 「あ、そうか…、連絡しなくてごめんね。もう大丈夫だよ。元気になったし、怪我も大したことないから。明日は学校に行くよ」 「はぁ〜、なら良かった。玲の兄貴から大丈夫だって聞いてたけど、やっぱり玲から直接聞きたくてさ…。明日、家まで迎えに行こうか?」 「ふふ、やっぱり拓真は心配性だなぁ。大丈夫だって。いつもの所で待っててよ」 「そうか…?わかった。なぁ、玲、今時間ある?」 「ん?あるよ?どうしたの?」 「実は、玲ん家のすぐ近くまで来てるんだけど、会えないかな…?」 「えっ、そうなの?早く言ってよ。どこ?そこまで行くよ」 「いや、病み上がりの玲に来てもらうのは悪いから、俺が行ってもいい?玲の兄貴には来るなって言われたけど…」 「全然大丈夫だよ。じゃあ、待ってる」 「おう、後でな」 僕は通話を切ると、急いで洗面所に行って顔を洗う。鏡を見ると、案の定、少し瞼が腫れていたけど仕方がない。前髪で隠すように整えて、リビングのインターフォンの前で拓真が来るのを待った。

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