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第22話 不協和音

少ししてインターフォンが鳴り、マンションのエントランスのロックを解除する。僕は玄関で拓真を待とうとリビングを出た。 玄関には、僕の靴と並んで悠ちゃんの靴があった。ということは、悠ちゃんは、やっぱり帰って来てるんだ。さっきスマホで確認した時間は、二時を過ぎたところだった。じゃあ昼ぐらいには、もう帰って来てたのかもしれない。 ーーリビングで寝てしまったことを怒られるかなぁ。泣いたのもバレてる?それに、あんな夢を見ちゃったし、寝惚けて変なことを言ってないよね…? 少し不安になって悠ちゃんの部屋のドアを見る。その時、玄関のインターフォンが鳴って、僕はビクリと肩を揺らしてから慌ててドアを開ける。 拓真が、手に箱を持って笑顔で立っていた。 「心配かけてごめんね、拓真。急にどうしたの?」 拓真が玄関の中に入り、ドアがガチャリと閉まる。拓真が差し出した物を、反射的に受け取った。 「これ…、玲が好きな店のプリン。食欲がなくても、これなら食べれるかなぁ…って」 「わぁ、ありがとっ。嬉しい!せっかくだし、拓真も一緒に食べようよ。どうぞ上がって」 「えっ、俺、玲の顔見たらすぐ帰ろうと思ってたんだけど…」 「え〜…、一人で食べるの寂しいし一緒に食べてよ。悠ちゃんは甘いの苦手だから…」 僕は少し拗ねて口を尖らせる。すると、「わ、わかったっ」と、慌てて拓真が靴を脱いだ。 拓真にはソファーに座ってもらい、コーヒーを準備する。前に拓真が、『紅茶は苦手なんだ』と言うのを聞いていたから。僕もコーヒーに砂糖と牛乳をたっぷりと入れて、カフェオレにした。 僕は苦い物が苦手だ。まだ、悠ちゃんと仲が良かった頃に、『玲はお子ちゃまだな』とからかわれたことがある。だって、苦いコーヒーは飲めないし、甘いカフェオレは美味しいんだからしょうがない。 ソファーの前のテーブルにカップを並べる。箱からガラスの容器に入ったプリンを取り出して、僕と拓真の前に置いた。結構大きな容器で、食べると美味しい上にすごく満足するんだ。 僕は、両手を合わせて挨拶をすると、添えられていたスプーンでプリンを口に入れる。甘さ控え目で、卵の味が濃ゆくて、やっぱりすごく美味しい。満面の笑みを拓真に向けて、「美味しいっ」と大きな声を出した。 「……っ!うっ、美味いよな、ここのプリン!俺、このプリンだと何個でもいけるわ」 「だよねっ。拓真、買ってきてくれてありがと。はぁ〜幸せ…」 「ふふ、玲が元気で良かった。なあ、その傷、痛そうだけど大丈夫なのか?」 「うん。もうあんまり痛くないよ。薬を塗る時に少ししみるぐらい…」 「自分で塗ってんの?」 「…ううん、悠ちゃんがしてくれる」 「へぇ…、やっぱ玲には優しいんだな」 拓真の言葉に少し顔が曇る。拓真はずっと、何か勘違いしているみたいだ。

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