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第23話 不協和音

プリンを食べ終えて、先ほどの拓真の言葉を訂正しようと口を開きかけた時に、リビングのドアが開いて悠ちゃんが入って来た。 隣で拓真が素早く立ち上がり、悠ちゃんに挨拶をする。 「こ、こんにちはっ。俺、玲…くんと同じクラスの宮野 拓真と言いますっ。お邪魔してます!」 緊張しているのか、かなりの大きな声で、僕はびっくりして拓真を見上げた。そんな僕に気付いて、拓真が照れ笑いを浮かべる。 「悪い…。声デカ過ぎたな…」 再びソファーに腰掛けながら、「驚き過ぎ…」と笑って僕の頰を指でそっと突つく。 すると、いつの間にかソファーの側まで来ていた悠ちゃんが、低い声を出した。 「おまえ…、俺は来るなと言ったよな。何しに来たんだ?」 「ゆ、悠ちゃんっ。拓真は僕を心配して見舞いに来てくれたんだよっ。そんな言い方しないでよ…」 反論する僕の頭をそっと撫でて、拓真はもう一度立ち上がると悠ちゃんに頭を下げた。 「勝手なことをしてすいません。でも、玲のことが心配で、居ても立っても居られなかったんです。直接元気な顔を見て、安心したかったんです。玲の顔を見れたので、俺は帰ります。お邪魔しました」 「えっ、もう帰るの?せっかく来たんだから、もう少しいてよ…」 僕は、拓真の服の裾を掴んで止める。拓真は困った顔で僕を見た。 「そうしたいけど、玲を疲れさせたくないしな…。やっぱり帰るよ。今日は早く寝てゆっくり休めよ。また、明日話そうぜ」 僕の頭をくしゃくしゃと撫でて、明るく笑いながら言う。拓真のその笑顔につられて僕も笑い、「うん、じゃあ明日」と頷いた。 拓真を玄関で見送ってすぐに、悠ちゃんが靴を履いて出て行こうとする。 「悠ちゃん…どこ行くの?」 「コンビニ。すぐ戻ってくる」 僕が尋ねるとそう答えて、悠ちゃんは、財布とスマホだけを持って出て行った。

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