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第34話 掌中乃珠

玲と涼が走り去った後、しつこく付きまとってくる女を振りほどいて二人を捜した。だけど、どこを捜しても見つからなくてイライラが募っていく。俺は、自分自身を殴り飛ばしたいほどに、自分に腹が立った。 ーーなんで、あんな態度を取ってしまうのだろう。玲は、俺にとって何よりも大切な存在なのに…。 走り疲れてとぼとぼと歩いていると、空から雫が落ちてきた。一つ二つと落ちてきた雫は、時間を空けずに本格的な雨になった。 雨宿りする間も無くずぶ濡れになった俺は、この雨の中、玲はどこにいるのかと、心配になる。 俺は唇を噛みしめると、降り注ぐ雨の中を再び駆け出した。 心当たりのある場所を見て回り、もう捜す所も無くなって仕方なく家に帰って来た。もしかして、玲は家に帰ってるのかも、と少しばかりの期待を胸に玄関を開ける。しかし、玄関に玲の靴は無く、俺はその場にしゃがみ込んだ。 「ちっ…、あいつ、どこ行ったんだよ…」 身体の弱い玲が、この雨の中でどうしてるのかと心配で、不安な気持ちを誤魔化すように呟く。 その時、制服のポケットからスマホの着信音がして、慌てて取り出して確認する。 それは、涼からのメールだった。 『玲くん、雨に濡れて寒そうだったから、俺の家に連れて来た。今、風呂に入ってる。今日はこのまま泊まってもらうから』 「はあっ⁉︎」 涼からのメールに思わず大きな声を上げた。 泊まるってなんだよっ?しかも風呂に入ってるだって?涼の野郎…、まさかあいつの裸を見てないだろうな。あの、透き通るような白い肌を…。 「くそっ!」 俺は鞄を置いて、スマホと財布をポケットに突っ込むと、ずぶ濡れのまま、傘を引っ掴んで玄関の外へ飛び出した。

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