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第38話 掌中乃珠

俺が誕生日やバレンタインの時に、もらったプレゼントやお菓子を持って帰ると、玲は最初はたくさんのお菓子に目を輝かせて喜んでいた。だけど「俺のことが好きだって言われた」と話すと、「僕の大好きなゆうちゃ、取っちゃやぁ…っ」と泣き出した。 本当に俺のことが好きで、俺の態度一つで笑ったり怒ったり泣いたりする玲が、可愛くて可愛くてどうしようもない。 俺にしがみ付き、「僕のゆうちゃ」と泣く玲を見て、俺の方こそ、玲を他の誰かに取られたら嫌だと思って、その柔らかい身体を強く抱きしめた。 もし玲に好きな奴が現れて、俺に向けられてる玲の愛情が、そいつに向いたらと考えるだけで耐えられない。玲よりももっと、俺は泣き叫んでしまうかもしれない。 友達に弟がいる子がいるけど、「弟が付きまとってきてうざい」と言って、邪険に扱っている様子を見たことがある。 彼がなぜ弟をうざいと思うのか不思議だった。だって、俺は玲に付きまとわれて嬉しいと思うことはあっても、うざいと思ったことなんて、一度もない。そう思う俺は、どこかおかしいのだろうか。 でも友達の弟に比べたら、玲がものすごく可愛いのだから仕方ないんだ、と自分を納得させていた。 そのうち、玲もモテるようになった。それも、女の子ではなく男の子から。 まあ玲は、小柄でその辺の女の子よりも可愛いのだから仕方がない。そう思ったけど、園庭で玲と同じ組らしき男の子が玲の小さな手を握ってるのを見て、俺はものすごく腹が立った。 そういう時は、俺は大きな声で「玲っ!」と呼んで手を振る。すると、玲がパアッと、とても嬉しそうに笑って、そいつの手を振り払って俺の所へ走って来るんだ。そして、どん!と俺にぶつかりながら、ぎゅうぎゅうと抱き付いてくる。 俺は玲の小さく柔らかな身体を抱きしめながら、口を開けてこちらを見ていた男の子に、すごく意地悪く笑ってやった。そして、その子が半泣きの顔で走り去って行くのを、『玲は俺のことが一番好きなんだぞ』と優越感に浸りながら見ていた。 俺がそんな意地悪いことを考えてるとは思ってもいない玲は、俺を見上げて「ゆうちゃ、遊ぼ?」と可愛らしく首を傾げる。 俺は顔を蕩けさせて、「いいよ。玲は何したい?」と玲の頰に手を当てて優しく聞いた。

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