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第39話 掌中乃珠 ※
俺が先に小学校に入り、一年後に玲が入って来た頃には、俺はもう、引き返せないくらいに玲が大好きになっていた。
それは兄弟の好きではなく、たぶん恋愛の好きとして。
だって、女の子に「悠くん好き」と言われて手を握られると気持ち悪くて、後で必死になって手を洗った。
でも、玲に「ゆうちゃん好き」と手を握られると、その手を強く握り返して、「俺も好き」と言って抱き寄せてしまう。そして、玲のほんのりと甘い匂いに幸せな気持ちになるんだ。
だから俺は、これはきっと恋愛の好きだとわかっていた。本気で玲と結婚したいとも思っていた。
ある時、友達が好きな女の子の話をし出して、あの子と大きくなったら結婚したいと言い出した。
「悠希は好きな女の子はいないのか?」と聞かれたから、「好きな女の子はいない」と答えた。だって俺の好きな玲は男の子だから。
その友達は、「あんなに可愛い弟がいたら他の女の子が普通に見えるよな。でも、可愛くても男だし兄弟だし結婚は出来ないけどな」と言って笑った。
俺はその言葉にひどく衝撃を受けた。俺は玲が世界中で一番好きだ。でもその玲とは結婚出来ない…。
わかってはいたけど、とてもショックだった。でも、それでいいのかもしれない。
俺は玲が好き過ぎて、俺だけのものにしたくて、閉じ込めてしまいたいと思ってしまう。
でも、兄弟という事実が、俺の暴走する気持ちの枷になってくれる。それに安心して、玲を好きでいられる。
俺は心の中で玲を想いながら、表面ではいい兄の振りを続けた。
小学校に入ってから、玲は度々、同級生の男の子や、俺の学年の男の子にからかわれるようになった。
どれも「女みてぇ」とか、「スカート履いて来いよ」とかの軽いものだったけど。
それでも、玲には辛かったらしく、よく泣きながら俺の教室に来た。玲をからかった奴らは、俺が注意するとすぐにからかうのをやめた。
俺はわかっていた。そいつらは、玲が好きだから、からかったんだ。玲に意地悪なことを言いながら、玲の腕を掴んだり背中を押したりして、玲に触れたがっていた。玲をからかった後は、必ず赤い顔をして、玲を見ていた。
俺はそいつらに注意をして、きつく睨み付けてやった。そして、家に帰ってから玲と一緒にお風呂に入り、そいつらが触れた腕や背中を、念入りに洗ってやった。
玲は、意地悪を言われたことを思い出すのか、時おり涙をポロリと零す。そして、俺にピタリと抱きついてくる。玲の柔らかい肌の感触を感じながら、俺は、身体の奥から何とも言えない気持ちが溢れてくるのを感じていた。
力いっぱい玲を抱きしめたい。玲の全部を俺のものにしてしまいたい。
まだ幼くて、セックスのことなど何もわかっていなかった俺は、込み上げる気持ちのまま、強く玲の身体を抱きしめ続けた。
二年、三年と学年が上がっていっても、玲は可愛いままだった。いや、玲は顔が整っていたから、どんどん可愛くなっていたように思う。
相変わらず、俺と玲は同じ布団で寝ていた。
二階の大きな部屋に、ベッドを二つ並べて置いていたけど、毎晩、玲が俺の布団に入ってきた。どんなにダメだと言っても入ってきた。俺の匂いと温もりがないと眠れないと言って。
俺は、口ではダメだと言いながら、本当は嬉しかった。一緒に寝た時に感じる玲のあったかい身体と、ほんのりと香る甘い匂いが大好きだった。
でもついに、別々に寝なければならない時がきた。俺の身体に変化が現れたからだ。
俺の十一歳の誕生日が過ぎた頃、いつものように玲を抱きしめて寝ていると、俺の性器に異変が起きた。むずむずとして、固く大きくなっている。玲を抱きしめて、そのままにしていたけど一向に治まらない。玲に固くなった俺のモノが当たっても困るので、反対側を向いてぎゅっと目を瞑った。すると、だんだんと落ち着いて、いつもの大きさに戻っていく。俺は安心して、眠りについた。
でもその日から、毎晩俺の性器が大きく変化する。抱きしめている玲から離れると、いつもの状態に戻る。何日かそんな日が続き、ある晩、どうにも堪らない気持ちになった俺は、眠る玲を抱きしめ、玲の匂いを嗅ぎながら性器をそっと触ってみた。
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