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第47話 掌中乃珠
俺はそれからも、あの女とは相性が悪かっただけかもしれないと何人かの女について行ったけど、結果は同じだった。
俺は確信した。俺は玲にしか感じないのだ。玲以外とは、セックスが出来ないのだ。
女と連れ立って歩いてる所を学校の奴らに見られていたことから、俺は遊び人と噂された。でも実際は、女に触れることも出来ない、ただの童貞だ。
学校が始まって、俺は玲より一本早い電車に乗る為に、早く家を出るようにした。なのに、電車に乗るといつも同じ車両の離れた場所に、玲が乗って来る。
俺は玲の少し悪い顔色を見て、小さく舌打ちをした。きっと玲は、俺に追いつく為に走って来たのだと気付いた。
あいつ、身体が弱いんだから無理すんなよ。それにあの華奢な身体が、このぎゅうぎゅう詰めに潰されたらどうすんだよっ?
玲が心配でイライラとして見てる俺の目に、同じ制服の背の高い男が、玲の周りに空間を作ってやり、その上自分の胸に凭れさせようとしていた。
その様子を見て、俺はますますイライラを募らせていく。
あいつ…誰だ?おい、玲に触るな。玲も何甘えてんだよ、くそっ…。
俺がちゃんと守ってやりたいのに、それが出来ない自分がとてつもなく歯がゆかった。
いつも玲と一緒に電車に乗ってる奴は宮野と言って、玲と同じクラスらしい。朝も休憩時間も弁当も移動教室も、いつも玲と一緒にいるようだ。実際、玲にくっついてる所を何度も見かけた。
きっと宮野は玲が好きなんだろう。玲が軽く奴の腕に触れた時、顔が赤く染まったのを見た。
玲は昔から男にモテていたから、そういう奴が出てくるだろうとは思っていた。だけど、面白くない。
だから、玲が倒れて怪我をした時に、家まで見舞いに来た宮野が帰って行く後を追って、牽制をした。
「おまえ、玲が好きなのか?好きだからと言って、あまり強引なことはしないでくれ。玲は純粋なんだ」
「玲が嫌がることはしません。でも、俺は玲ともっと関わりたい。それに俺が玲とどう接しようと、それは俺の自由でしょ。…ああ、もしかしてお兄さんのそれは、嫉妬?お兄さんも、玲が好きなんですか?」
「それこそおまえには関係ない。足止めして悪かったな」
俺は不快な面持ちで宮野に背を向けると、振り返ることなくマンションの中へ戻って行った。
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