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第48話 掌中乃珠

玲と出会ってからの事を振り返っているうちに、涼の家に着いた。俺は傘を放り投げて玄関に飛びつき、インターフォンを何度も鳴らす。それだけでは飽き足らず、拳でドアを連打した。 「おいっ、涼っ!開けろ!」 叫びながらドアを叩き続けていると、ガチャリと鍵を外す音が聞こえた。 「うるさい。そんなに何度も鳴らしたり叩いたりしなくても、ちゃんと聞こえてるから」 すぐにドアが開いて、涼が文句を言いながら出て来た。俺の姿を見て呆れたように息を吐く。 「はあ〜、なんだそれ…ひどい格好だな。そんなになるくらい大切なら、もっと優しくしてやれよ…」 小さくブツブツと呟く涼の腕を掴んで焦った声を出す。 「おいっ、玲は?おまえ…玲に何もしてないだろうなっ?」 「ちょっと、変な言いがかりはやめてくれる?たとえ俺が玲くんを好きでも、他の誰かを想ってる子に、無理矢理手なんか出さないよ」 「そ…っか。…え?玲が誰を好きって…」 「悠ちゃん?」 涼の背後のドアから、玲が驚いた顔をして出て来た。 「悠ちゃんっ、どうしたの?ずぶ濡れじゃん…っ。涼さん、すいません、タオル貸して下さいっ」 「いい…。玲、帰るぞ。荷物を持ってこいよ」 「え?あ…うん。わかった」 一瞬戸惑った顔で涼と俺を見て、玲は頷くとリビングに戻った。少しして、涼に借りていたらしい服から制服に着替えて、荷物を持って出て来た。 「涼さん、借りてた服は、洗って返します。いろいろとお世話になりました。ありがとうございます」 涼に向かって丁寧に頭を下げながら、玲は礼を言った。 「あ〜あ、残念。玲くんと一緒に寝れると思ったのに。今度は悠希の許可をもらって泊まりにおいで。悠希が反対したら、悠希も連れて来ていいからさ」 「はいっ、ぜひ」 「ん、いい子。俺のこの傘はかなり大きいヤツなんだ。これ、貸したげるから、もう濡れないように気をつけて。悠希も帰ったら早く風呂に入れよ」 「わかってる…。騒いで悪かったな」 そう言うと、俺は玲から荷物を取り上げ、開いたままのドアから外に出た。玲も俺に続いて「じゃあ…涼さん、おやすみなさい」と挨拶をして出て来た。 俺は玲の鞄を左肩にかけ、左手に傘を、右手で玲の手をしっかりと握りしめて歩き出した。

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