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第51話 屋烏乃愛
僕は、悠ちゃんが言った言葉を頭の中で反芻する。
悠ちゃん…、僕を好きって言った。嫌いじゃなかったんだ…、良かった…っ。え?待って。好きよりも愛してるって…。初めから僕だけだって……。
悠ちゃんの言葉を理解した途端、僕は声を上げて泣き出した。泣き出した僕の頭を、悠ちゃんが自分の胸の中に抱え込んで、髪にキスをする。
思う存分泣いて、ひくひくとしゃくり上げながら、僕は顔を上げて悠ちゃんを見た。
「ぐすっ…、悠ちゃん、ほ、ほんと?僕のこと、好きっ?う、嬉しい…っ!僕も悠ちゃんが好き。大好きっ。僕も…悠ちゃんだけ…っ。ちっちゃい頃からずっと…」
「そっか…、うん。良かった…。玲…、愛してるよ」
悠ちゃんが、両手で僕の顔を包んで唇を押し当てた。僕が慌ててギュッと目を閉じると、少しだけ唇を離して悠ちゃんがクスリと笑う。そしてまた、角度を変えて唇を合わせた。
悠ちゃんの唇は薄いのに、触れると柔らかくて気持ちが良い。僕はうっとりと蕩けて力が抜け、少し口が開いてしまった。その隙間から、ぬるりと熱い舌が入ってくる。驚いて悠ちゃんの服を掴んだ僕の後頭部に、悠ちゃんが手を回して引き寄せ、強く唇を合わせて僕の舌に舌を絡ませた。
「ふ…んぅ、んっ、ふぁ…っ」
激しい舌の動きに僕は鼻から声を漏らしながら、必死で舌を伸ばす。僕の舌を吸い上げて悠ちゃんの唇がゆっくりと離れていく。僕は熱い息を吐いて、そっと目を開けた。流れ込んできた悠ちゃんの唾液をコクリと飲んだ僕を見て、悠ちゃんがとても嬉しそうに笑った。
「やっと、おまえに堂々と触れることが出来た。玲…。俺はもう、おまえを離してやれないからな?」
そう言って、僕の口の端に垂れた涎をペロリと舐める。
僕は荒い息を整えて、悠ちゃんに頷いてみせた。
「うん…。僕も離れたくないから、ずっと一緒にいて」
「玲…」
もう一度、悠ちゃんが顔を近づけようとした時、僕の目がクラリと回って、悠ちゃんの胸に頭をつけた。
「どうした?」
「ん…、なんか目が回る…」
「えっ?」
悠ちゃんが、慌てて僕の額に手を当てる。
「う〜ん…、少し熱いか?体温計を取ってくるからちょっと待ってろ」
そう言って立ち上がろうとした悠ちゃんを、僕は「離れたらやだ」と引き留める。
悠ちゃんは、困ったような嬉しいような顔をしてから僕を抱き上げて、薬箱から体温計を出すと、僕の部屋に行ってベッドに寝かせてくれた。
悠ちゃんに熱を計ってもらうと、37.5度あった。「微熱だから大丈夫」と言ったけど、悠ちゃんは僕の頭を撫でながら、不安げな顔をする。
「なんで、ずっと濡れたままだった俺じゃなくて、おまえが熱を出してんだよ…。ったく…、おまえは身体が弱いから、心配で仕方がない。ほら、薬を持って来るから、すぐに飲んで寝ろよ」
「うん…ごめんね…」
「バカ、おまえが謝ることなんて何もない」
ふっと笑って僕の頰をスルリと撫でると、悠ちゃんは薬を取りに部屋から出て行った。
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