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第63話 屋烏乃愛

次に目を覚ました時には、買い物から帰って来た悠ちゃんが、晩ご飯を作った後だった。 起きた時に真っ暗な部屋に悠ちゃんの姿が見えなくて、少し不安になりながらリビングに行くと、テーブルには出来上がったばかりの野菜炒めが並べられていた。 「玲、起きたのか?身体はどうだ?」 「悠ちゃん…帰って来てた…。良かった。ん、まだちょっと怠い…」 寂しげに笑う僕を見て、悠ちゃんがキッチンから慌てて傍に来る。 「悪い…不安にさせたか?玲がよく眠ってたから、その間に飯を作っちまおうと思ったんだ。まだ怠い?」 僕の顔を覗き込んで、悠ちゃんが額に額をコツンと当てた。途端に眉間にシワを寄せる。 「熱い…。また熱が上がったみたいだな。俺が無理させたせいだ。ごめん」 「やだっ。謝ったらやだ…。だって、僕はすごく嬉しくて幸せな気持ちになったんだよ?謝られたら、それを否定された気がする…から、やだ…」 「そうだな…、わかった。でもおまえの身体に負担をかけさせちまった。明日も念の為、学校は休もう」 「僕だけ…?」 「心配で一人になんてさせられるか。俺も休むよ。明日こそ、ゆっくりと養生しような」 「うんっ」 悠ちゃんに頭を撫でられて、僕は笑顔を向ける。 身体を起こした時に、頭がふわふわするなぁ…とは思ったけど、僕の許容範囲を超えるくらいの嬉しいことがあったから、興奮してるだけだと思っていた。言われてみれば、確かに顔も身体も熱い気がする。でも、心も身体も満たされているからか、ちっとも辛くない。むしろ、夢の中にいるみたいに全身がふわふわとしている。 そう思っていると、身体がグラリと傾いだらしく、悠ちゃんが慌てて僕を抱きとめた。 「玲っ!びっ…くりした…。無理しないで休もう」 「あ…ごめん。でも僕、お腹空いたから、悠ちゃんが作った野菜炒め…食べたい…」 「…今のおまえには脂っこいかもしれないな。食えるのか?」 「うん。食欲はあるんだ…。だから食べたい…」 「わかった。食えるだけでいいからな」 悠ちゃんにテーブルの椅子に座らせてもらい、両手を合わせてから箸を手に取る。野菜と肉を掴んで口に入れようとして、ポトリとお皿に落としてしまった。 「悠ちゃん…。手が震えて箸が使えない…」 困った僕を見て、悠ちゃんが申し訳なさそうな表情で、僕の隣に座り頰を撫でた。 「俺ヤバいわ…。おまえが俺のせいでそうなってるのかと思うと、なんか嬉しいんだけど…。俺ってSなのかな。ほら、箸貸してみろ。食べさせてやるよ」 「えっ、え…っと…。あ、ありがと…」 僕は少し照れ笑いを浮かべて、悠ちゃんに箸を渡す。 悠ちゃんはというと、さっきの反省していた表情から嬉しそうな顔に変わって、肉と野菜を掴むと、僕の口の前に持ってきた。

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