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第66話 屋烏乃愛
悠ちゃんの態度に、僕のこと呆れたのかな…と、しょんぼりして、悠ちゃんの胸を押して距離を取ろうとした。そんな僕の腕を掴んで、悠ちゃんが僕を覗き込みながら、いきなり「ごめん…」と謝る。
僕は驚いて悠ちゃんを見た。
「え?なんで悠ちゃんが謝るの?」
悠ちゃんは、バツの悪い顔をして、言いにくそうに話し出した。
「別におまえがいやらしいわけじゃないと思う…。いや、いやらしいおまえでも俺は全然オッケーなんだけどさ…。玲、その…キスの夢はいつ見たんだ?」
「いつ…ていうか、悠ちゃんと離れて寝るようになってから何度も見てる…。夢を見ては嬉しくて、喜んでたんだ…。僕のこと…気持ち悪いと思う?」
「全然。むしろ俺の方が気持ち悪くて最低だわ。この際だから白状する。玲が見てた夢は、きっと俺のせいだ。たぶん、おまえが夢だと思ってたのは、実際に俺がしていたことだ…」
「…え?どういうこと?」
首を傾げる僕の頭を、悠ちゃんが、そっと自分の胸に寄せた。
「おまえと一緒のベッドで寝なくなった頃な、俺はおまえに手を出さないようにと離れたのに、結局は我慢出来なくて…真夜中になると、ぐっすりと眠るおまえに…キスをしてたんだ…。な、俺って卑怯で汚いだろ?ごめんな、玲…」
突然の悠ちゃんの告白に、僕は驚きつつも、今までのことを思い出していた。
キスの夢は一回や二回じゃない。もしかして、キスの夢だと思ってたのは全部……。
上目遣いで悠ちゃんを見る。僕の問うような視線に気づくと、悠ちゃんが苦笑いをした。
「たぶん…玲が夢だと思ってるのは全部、俺が実際にしたことだと、思う…。俺、頻繁におまえにキスしてる。もちろん、この家で一緒に住むようになってからも…。玲…、俺に怒ってもいいよ」
「ううん…怒んないよ。だって、僕もキスしたかったんだもん。僕…夢だと思ってたから、いつもぼんやりとしてたけど、ちゃんと起きれば良かった…。現実に悠ちゃんがしてくれてるんだって、知りたかった…」
「俺は、玲が可愛過ぎて、好き過ぎて、堪らなかったんだよ…」
困った表情で、悠ちゃんが僕の頰を優しく包む。僕はふと、あることに思い至って、悠ちゃんの腕を掴むと大きな声を出した。
「あっ!悠ちゃん、今、一緒に寝なくなった頃からって言った?それって、僕が小学四年くらいの頃だよね?その頃には、悠ちゃんが僕にキスしてたってことだよね?」
「そうだな…。それがどうかしたか?」
「そ…っかぁ…。良かったぁ。悠ちゃん、僕にキスしてくれてありがと…」
「え?なんだそれ?どういうこと?」
悠ちゃんが、訳がわからないという顔で僕に尋ねてくる。僕はあることを思い返して、目に涙を溜めて俯いた。
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