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第81話 寤寐思服

おばさんが焼いたシフォンケーキは、とてもふわふわとして美味しい。横に添えられた生クリームと一緒に口に入れて、僕は満面の笑みで隣に座る拓真を見た。 「おいひいねっ!んぅっ、んっ、はぁ…っ。僕、生クリームも好きだから最高っ。おばさん、すごく美味しいです!」 「よかった。残りは持って帰ってくれる?残っても拓真は食べないし…」 「えっ!いいんですか?ありがとうっ」 「ふふ、玲くん、ホント可愛いわねぇ…」 僕がおばさんにニコリと笑って頭を下げると、また可愛いと言って褒めてくれる。たぶん、僕が拓真よりもかなり身長が低いから、小さな子供に見えてしまってるのかもしれない。 母さんもよく、僕のことを「可愛い玲」と言ってくれた。その時の母さんと重なって、僕の心がほんわかと温かくなる。ちなみに悠ちゃんのことは、よく「かっこいい悠希」と言っていた。母さんがそう言うたびに、僕も横で頷いていた。 ふいに母さんのことを思い出してしまって、静かになった僕を、拓真が心配そうに覗き込んできた。 「玲、どうした?」 「え?あ…ううん、なんでもない。じゃあ、そろそろ拓真の部屋に行く?」 「おう、行こうぜ。母さん、俺たち部屋に行くから邪魔すんなよ」 「え〜?もう行っちゃうの?玲くん、帰りに顔出してね?」 「はい。ご馳走様でした」 僕はおばさんにお礼を言うと、先に歩く拓真に続いて、二階にある拓真の部屋に向かった。 拓真の部屋は、床の所々に雑誌が積まれていたり、ベッドに服が数枚、無造作に置かれていたりするけど、綺麗に片付けられている方だと思う。 とりあえず、ベッドに凭れて床に座ると、拓真がクッションを僕に渡して隣に座った。 「それ、敷いておけよ。尻が痛いだろ?」 「大丈夫だよ。拓真は?いらないの?」 「俺の尻は固くて丈夫だからいいんだ。玲は柔らかそうだから…ていうか…っ、いっ、いいから敷いとけっ」 「…?ありがとう」 拓真が赤い顔をしてゴニョゴニョと何か言ってるけど、暑いのかなぁ?でも今日は、窓から心地いい風が入ってきて、ちょうどいい気候だと思うんだけど…。 僕は拓真の赤い顔を見つめて、少しだけ首を傾げた。

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