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第91話 寤寐思服
悠ちゃんの低く響く声に、僕は不安になって身体の向きを変え、悠ちゃんの肩に頭を乗せた。
「…許した。だって…いっぱい謝ってくれたし、僕、やっぱり拓真とは友達でいたいから…。ダメだった?」
涙を湛えた瞳で、僕はそっと悠ちゃんを見上げる。
悠ちゃんは、とても怖い顔をしていたけど、僕の頰に涙がポロリと零れ落ちたのを見て、小さく溜め息を吐いた。
「玲…おまえは優し過ぎ。もっとあいつを怒鳴って殴ってやってもよかったのに。文句も言わずに許したんだろ?」
僕の頰を掌で拭いながら、悠ちゃんが苦笑いを浮かべて言う。その手を掴んで、僕は目いっぱい怖い顔をして言った。
「いっぱい文句は言ったよ。その都度、拓真は謝ってた。殴ってくれとも言ったけど、僕はそんなことできないし…。それに、ちゃんと僕の恋人は悠ちゃんだってわかってるから諦める、って言ってたよ。僕たちのこと、認めてくれたんだよ。だから大丈夫…っ」
「まあ…、あいつを許すかどうかはおまえが決めることだからな。あ〜っ、でも、俺はすぐには許せねぇ。当分、あいつには冷たく当たってやる」
そう言って怒る悠ちゃんを見上げて、僕は強く抱きつく。
「悠ちゃん、僕以上に怒ってくれるんだね…。ありがと」
「おまえが怒らなさ過ぎなんだよ。まあそこも、おまえのいいところなんだけどな」
「そんなことないと思う。僕だって怒る時は怒るよ?」
「へぇ〜、そうなのか?俺、おまえの怒った顔を見てみたいな。メッチャ興奮するかも…」
「え…えっ?もうっ何言って…あっ」
悠ちゃんの手が僕のTシャツの裾から入って、肌をスルリと撫でる。背中を撫でていた手が前に回って、僕の胸をしつこく擦った。
「あっ、はぁ…っ、や…」
僕は悠ちゃんの肩を掴んでピクピクと震えた。悠ちゃんが、俯く僕の唇をすくい上げるようにキスをして、舌を伸ばすとグルリと口内を舐めた。
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