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第96話 愛月徹灯
散策から戻ると、冷蔵庫にある食材でカレーを作った。僕がメインで作り、皆んなには、お米を洗ってもらったり野菜を切ってもらったりした。
市販のカレールーを使ったから美味しいのは当たり前なんだけど、悠ちゃんも涼さんも拓真も、「美味しい!」「玲はスゴい!」と褒めてくれて、とても照れ臭かった。
夕飯の後は、庭で、涼さんが持ってきた花火をした。
花火なんて小学生の時以来で、妙にドキドキとして花火を持つ手が少しだけ震えた。
涼さんと拓真から少し離れて、悠ちゃんと二人で眺める線香花火がとても綺麗だ。僕はなぜだか胸が詰まって泣きそうになってしまい、悠ちゃんに気づかれないように、そっと瞬きをした。
花火の後は、順番にお風呂に入り、少しだけテレビを見て、各自、部屋に戻った。
僕と悠ちゃんが泊まる部屋には、二つベッドがあるのだけど、悠ちゃんに「玲、おいで」と呼ばれて、一つのベッドに二人で寝転んだ。
家でも頻繁に一緒のベッドで寝てるけど、違う場所だと、いつもと違って少し緊張する。
悠ちゃんに引き寄せられるままに胸に顔をつけて、僕は今日の楽しかった出来事を思い出していた。
「玲…、俺と線香花火をしてる時、泣きそうになってなかったか?」
僕の髪を優しく梳きながら、悠ちゃんが静かに囁く。
気づかれていないと思ってたけど、悠ちゃんには何でもお見通しなんだなぁ…と、僕は顔を上げた。
「ふふ、悠ちゃんは僕のことなんでもわかるんだね。あのね…線香花火がすごく綺麗で、そんな綺麗なものを悠ちゃんと見れたことがとても幸せで…。なんだか感動しちゃったんだ…。悠ちゃん、来年も花火しようね。綺麗なものをいっぱい、一緒に見ようね…」
「そっか。玲、悲しい時も怒った時も感動した時も、俺の前では涙を隠すな…」
「うん…。悠ちゃんが拭いてくれるの?」
「いや…、舐める」
「ふ…なにそれ。悠ちゃんの変態…」
「なんとでも言え」
悠ちゃんが、僕の頰を大きな手で包み、親指で唇をなぞる。そのまま顔を近づけて、しっとりと唇を合わせた。
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