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第97話 愛月徹灯
翌日は、近くにあるテニスコートを借りて、朝からテニスをした。
運動神経が鈍い僕は、皆んなの足を引っ張ってしまい、しかも早々にバテて、すぐにコートの横にあるベンチに引き上げた。
三人ともとても上手で、僕はぼんやりとラリーを眺める。特に悠ちゃんは、中学の時にテニス部に入っていただけあって、綺麗なフォームでパシッと速い球を打つ。涼さんも運動神経がいいらしく、二人のラリーは見ていてとても迫力があった。
そのうちに二人の気迫に気圧されたのか、拓真が僕の隣に来て、苦笑いをしながら座った。
「お疲れ様。拓真、上手だね。したことあるの?」
「うん…、小学の時に少しだけ習ってた。でも、あの二人には手も足も出ねーよ。なんかあの二人って、なんでも出来そうだよな」
拓真が、汗を拭いてスポーツドリンクを飲み、大きく息を吐く。
「そうだね。悠ちゃんは、昔からスポーツ万能でね、すごくカッコよくて、女の子はもちろん、男の子からも人気があったなぁ…」
「それ、わかる気がする。涼さんもそんな感じじゃね?俺もあの二人みたいにカッコよくなりて〜」
「え〜…?拓真だって運動神経いいし、充分カッコいいよ?よくモテてるじゃない」
「他の奴にモテてもな…。俺は……あ、ごめん」
慌てて拓真が謝る。拓真が何を言おうとしたかわかったけど、気づかないフリをして、僕はそっと目を逸らした。
しばらく二人のラリーを見ていたけど、だんだんと暇を持て余してきた拓真に、「あっちに湖があったから見に行こう」と誘われた。
ここにジッと座ってても暑いし、「僕も行きたい」と頷く。拓真は「よしっ」と勢いをつけて立ち上がると、「悠希さんに許可もらってくるわ」と言って、コートへ走って行った。
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