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第98話 愛月徹灯

拓真から話を聞いて、悠ちゃんはかなり渋い顔をしてたけど、涼さんに何か言われて、渋々頷いた。 拓真が僕の元へ走って来て、「許可もらったよ」と笑顔を見せる。 僕は立ち上がり、悠ちゃんに向かって「じゃあ行ってくるね」と手を振った。悠ちゃんも「気をつけろよっ」と言って、手を振り返してくれた。 テニスコートを出て、雑木林の中の細い道を並んで歩く。木々の間をすり抜けて吹いてくる風が、運動をして熱くなった身体を冷ましてくれて、とても心地いい。 ゆっくりと歩きながら、拓真が大きく伸びをした。 「う〜ん、気持ちいいなぁ。暑いのは暑いけど、蒸し蒸ししてなくて過ごしやすいよな?」 「うん、風が気持ちいいもんね。課題も捗るよね」 「あ、それだけどさ…、課題多いと思わん?俺、全然進んでないんだよな〜」 「そうかな?僕、もう半分終わったよ?」 「えっ!マジですか…っ」 とても驚いた様子の拓真が、足を止めてジーッと僕を見つめる。 「…な、なに?」 「玲…、いや、玲様、どうか少しだけ写させて下さい」 僕がたじろいで少し身を引くと、拓真が深く頭を下げた。 「お願いしますっ」 「え〜…、自分でやんないと覚えないよ?」 「やる!半分はやるからっ」 「もぉ〜。どうしてもの時は見せてあげるから、なるべく自分で頑張って」 「はい…。玲センセーは厳しいな…」 ポツリと呟く拓真に、「うん、玲センセーは厳しいよ?」と笑って前を向くと、少し先にキラキラと輝く湖面が見えた。 僕は小さく歓声を上げて、湖に向かって駆け出す。すぐに辿り着いたそこは、そんなに大きくはないけど、水が澄んで、太陽の光に反射した湖面がキラキラと輝いていた。 「うわぁ…」 「玲っ、急に走るなよっ。危ないだろ?」 「子供じゃないんだから、大丈夫だよ。それより見てっ。すごく綺麗…」 僕の視線につられて、拓真が前を向く。「ああ、ホントだな」と呟く拓真に、僕は「ね?」と振り向いて微笑んだ。

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