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第105話 愛月徹灯

湖の周りを悠ちゃんと手を繋いで歩く。正司さんに会ってからずっと無言で、繋がれた僕の手が、強く握られて痛い。 僕は足を止めて悠ちゃんの手を引き、ポツリと言った。 「悠ちゃん…、手、痛い。どうしたの?怒ってるの?」 「ああ…、ごめん」 悠ちゃんは、チラリと繋いだ手を見て謝り、僕の身体を引き寄せて、そっと抱きしめた。 「ごめん、玲。さっきのあいつ、おまえのことを気にしてるように見えてさ…、腹が立った。…誰もがおまえを目にすると、手に入れたくて堪らなくなるんだよ、きっと。俺、おまえを誰の目にも触れさせないように閉じ込めておきたい…」 「いいよ。悠ちゃんがそれで安心するなら、そうして?でもその代わり、悠ちゃんも一緒に閉じこもるんだよ?僕だって、悠ちゃんを他の誰にも見せたくない。だって…、ここへ来る途中の駅とかでも、女の人は皆んな、悠ちゃんを見てた…」 悠ちゃんの胸に頰を擦りつけて、くぐもった声を出す。悠ちゃんが僕の頰に手を添えて顔を上げさせ、前髪にキスをした。 「俺より涼を見てただろ?でも、俺のことで拗ねてくれるの、嬉しい。昼から出かけるけど、俺だけを見てろよ」 「うん。ねぇ悠ちゃん、僕、悠ちゃんとお揃いの物が欲しいの。一緒に買おう?」 「いいぜ。何個でも買おう」 「ありがとっ。すごく楽しみになってきた。そろそろ戻って準備しようよ?」 「ああ、その前に…」 「え…あ」 別荘に戻ろうと、身体を離そうとした僕を強く抱きしめる。見上げて首を傾げた僕の目に、悠ちゃんの端整な顔がアップで映り、唇に柔らかい物が押し当てられた。 すぐに熱い舌が僕の唇を割って入って、僕の舌を絡め取る。ピチャピチャと音を立てて激しく舌を絡め、ジュっと吸い上げて離れていく。 「ふ…ぁ、んぅ、ん…っ」 コクンと唾液を飲み込んで、潤んだ瞳で悠ちゃんを見つめる。もう一度、悠ちゃんの胸に頰を当てて目を閉じたところで、微かに僕たちを呼ぶ声が聞こえてきた。 悠ちゃんから身体を離して、声がする方に身体を向ける。しばらくすると、森から伸びた湖へと続く道から、涼さんと拓真が姿を現した。

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