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第108話 愛月徹灯

牧場の後は、ゴンドラに乗って山の上に行き、自然園の中にある遊歩道を歩いて、珍しい高山植物を見て回った。 自然園を出て、またゴンドラに乗って降りて来た頃には、陽も落ちてきて、心地いい風が吹いていた。 僕は急いで牧場内にあるショップで、とても小さな羊のぬいぐるみがついたストラップを、二つ買った。羊の首についているリボンが、赤と青のを二つ。赤色が好きな悠ちゃんには赤を、青色が好きな僕は青を。別荘に帰ってから渡そうと、たすき掛けにかけているカバンに入れた。 晩ご飯は街に出て、ファミリーレストランで済ませた。 別荘に着いたら、とても疲れて寝てしまいそうになる僕を悠ちゃんが引っ張って、一緒にお風呂に入った。 今日は、僕が半分眠っていたから、変な気分になる間も無く、悠ちゃんが素早く僕と自分を洗ってお風呂場を出た。 自分で何とか身体を拭いて服を着たけど、髪の毛が全然拭けてなかったらしく、悠ちゃんにタオルを取られて、ワシャワシャと拭かれる。 何度も目を瞬かせながら歯を磨くと、また悠ちゃんに手を引かれて二階の部屋に向かった。 悠ちゃんが、僕をベッドに座らせて、ドライヤーで髪を乾かしていく。僕の髪を梳く悠ちゃんの指の感触がとても心地よくて、僕は何度もカクンと頭を揺らした。 ドライヤーが終わり、髪の毛を整えてくれた頃には、僕はもう、ほとんど夢の中だ。コテリとベッドに寝転んで両手を伸ばすと、悠ちゃんが抱きしめてくれる。 「ゆ…ちゃ…。お、やす…み…ぃ…」 「おやすみ、玲」 悠ちゃんが、優しく僕の唇にキスをする。 悠ちゃんの腕の中で、僕は目を閉じたままフニャリと笑って、幸せな気分で眠りについた。

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