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第109話 愛月徹灯

昨夜は、僕は疲れてすぐに寝てしまったけど、拓真は涼さんと課題の続きを遅くまでやっていたみたいで、とても疲れた顔をして起きてきた。 涼さんも拓真につき合って寝るのが遅かった筈なのに、なぜかすっきりした顔をしている。 「おはようございます、涼さん。拓真もおはよう。昨日は先に寝てしまってごめんなさい」 「気にしなくていいんだよ。大丈夫?疲れは取れた?」 「はいっ。とても元気です。涼さんこそ、眠くないんですか?」 「ふふ、眠くないよ。俺はね、短時間に集中して深く眠るから、睡眠時間が短くても平気なんだ。宮野くんは…辛そうだね」 拓真を見て、涼さんはクスリと笑う。拓真は、大きな欠伸をすると、僕と涼さんに見られていたことに気づいて、照れ笑いをした。 今日は、各々が好きなことをして、ゆっくりと過ごすことになった。 僕は、またあの湖に行きたくて、悠ちゃんを誘う。悠ちゃんは、「好きだな…」と呆れながらも、「いいよ」と笑って、涼さんと拓真に湖に行くことを告げると、二人で外に出た。 悠ちゃんとしっかりと手を繋いで、森の中の小道を歩く。 ここに来てからずっと天気が良かったけど、今日は雨が降るのか、空が暗くて風も強い。 僕は、帽子を飛ばされないように、もう片方の手で押さえて言った。 「なんか天気悪いね…。雨、大丈夫かな?」 「ちょっと行って帰って来るだけだし、大丈夫だろ」 「ん、そうだね…わぁっ!」 突然、強い風が吹きつけてきて固く目を閉じる。驚いて、少し手を離した隙に、帽子が飛んでいってしまった。 「あっ!帽子がっ。悠ちゃん、僕取ってくる…っ」 帽子を追いかけて走り出そうとした僕を、悠ちゃんが腕を掴んで止める。 「待てっ。俺が取って来るから、おまえはここで待ってろ。絶対に動くなよ?」 「うん…ありがと…っ」 僕を木陰に立たせて頰を撫でると、悠ちゃんは帽子が飛んでいった方へ走って行った。 すぐに戻って来ると思って、悠ちゃんが走って行った方を見ていたけど、ずいぶんと飛ばされて見当たらないのか、中々戻って来ない。『僕も探しに行った方がいいかなぁ』と不安になって、一歩足を踏み出した瞬間、いきなり後ろから肩を掴まれた。 「ひゃあっ⁉︎」 僕はとても驚いて、叫び声を上げて振り返る。そこには、笑顔で僕を見つめる、正司さんがいた。

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