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第116話 疑心暗鬼
旅行から帰って来た日から、悠ちゃんと二人だけで過ごす日々が続いた。朝と夜は僕がご飯を作って、昼は悠ちゃんが作ってくれる。
午前中に残っている課題をやって、昼からは撮り溜めたドラマや映画を観て過ごした。
夜になると、どちらかのベッドに一緒に寝転んで、キスをして眠りにつく。そして、二日置きに抱き合った。
悠ちゃんと抱き合った翌日は、身体が怠くて起きれないから、僕は昼まで寝ていた。悠ちゃんも一緒に寝ている時もあるし、先に起きて、掃除や洗濯など家事をやってくれてる時もあった。
目覚めた時に悠ちゃんの姿が見えなくても、家のどこかから物音が聞こえていたから、安心してまた目を閉じた。
僕たちが帰って来てから三日後の夜に、拓真からメールが来た。涼さんと拓真も、今日帰って来たらしい。
拓真が『また遊ぼう』と言ってきたけど、僕はもうしばらく悠ちゃんと二人きりでいたかったから、曖昧な返事しか返していない。
拓真からメールが来た翌日の午前中に、涼さんが来たらしい。悠ちゃんが玄関先で会ったみたいだけど、僕は前の夜の激しいセックスで動けなくてまだ寝ていたから、後で悠ちゃんに聞くまで、涼さんが来たことすら知らなかった。
僕と悠ちゃんが二人だけで過ごし始めてから、ちょうど一週間が経ったある日、 朝目覚めると、目の前に悠ちゃんがいなかった。
ーー先に起きて、家のことしてくれてるのかな…。
そう思って気配を窺うけど、家の中はしんとして、物音一つ聞こえない。途端に僕は不安になって、のそのそと起きあがると、ベッドから降りて部屋を出た。
リビングにはいなくて、今度は洗面所を覗く。お風呂場やトイレの中も見たけど、悠ちゃんの姿がない。
次に、悠ちゃんの部屋に入ってクローゼットまで開けて見たけど、やっぱりいない。
最後に玄関を見に行くと、悠ちゃんの靴がなかった。
ーー…え?どこかに出かけたの?悠ちゃん、バイトは辞めたって言ってたし…。どこに行ったの?…僕の傍にいる、って言ったのに…。
僕は、急にとても寂しく不安になり、じっとしていられなくなった。部屋に戻ってTシャツとズボンに着替える。急いで洗面所に行って顔を洗うと、玄関で靴を履いて外に出た。
二つのエレベーターが同時に上がってきて、一瞬早く開いた方に飛び込む。エレベーターの壁にもたれて、どこを探せばいい?と思案していると、チン!と音が鳴って一階に着いた。
早歩きでエレベーターを降りてエントランスを出る。右と左、どっちに行こうかと迷っていると、突然、後ろから強く肩を掴まれた。
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