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第120話 疑心暗鬼

僕はリビングのソファーに座って、悠ちゃんに赤くなった手首に薬を塗られていた。薬を塗った上にガーゼを当てて、その上に悠ちゃんが使っていたリストバンドを着ける。僕は怒っていた筈なんだけど、悠ちゃんのリストバンドが嬉しくて、そっと指で撫でて微笑んだ。 「それ、ちゃんと洗ってしまってたヤツだから。おまえの細い手首には、ちょっと大きいな」 「ううん。悠ちゃんのだと思うと嬉しい。これ、綺麗な青色だね……、はっ!」 リストバンドに気を取られて流してしまうところだったけど、僕は悠ちゃんにとんでもないことをされたんだった。 僕は、僕の肩を抱こうとする悠ちゃんから、少し離れてそっぽを向く。さっきのことを思い出して、鼻の奥がツンとなった。 悠ちゃんが、僕の髪の毛を梳きながら、言い訳を口にする。 「玲、俺さ、おまえのことが好き過ぎて、止まらなくなるんだ。例え俺が一緒にいたとしても、誰の目にも触れさせたくない。それに、おまえのことは、全て俺がしてあげたい。…ごめん、俺、おかしいよな…」 弱々しい悠ちゃんの声に、僕はゆっくりと振り返った。悠ちゃんの肩に手を置いて、顔を寄せてチュッと口づける。 「それだけ僕のこと、好きってことでしょ?僕も前に閉じ込めていい、って言ったからいいんだけど、今日みたいに縛られるのは嫌だ。それに…恥ずかしいことも、やだ」 「わかった。縛るのはもうしない。でも、玲のことは、なんでもしてあげたいんだ。あんなの、恥ずかしいうちに入んねーだろ?俺には可愛いだけだ。すっげー興奮したし…。なぁ、今日はいっぱい玲を抱きたい」 「あれ…、可愛いの?僕、すごく恥ずかしかったんだから…」 「でも、少しは興奮しただろ?おまえ、ちょっと固くなってたじゃねぇか」 「ちが…っ。…悠ちゃんの、変態…」 「変態でいいぜ。おまえが好き過ぎるからしょうがない」 「でも、それでも好き…」 悠ちゃんが嬉しそうに笑って、僕を抱きしめる。結局はこの笑顔に、全てを許してしまうんだ。 僕もふふっ、と笑うと、もう一度、悠ちゃんの唇にキスをした。

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