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第123話 疑心暗鬼

フワフワと身体が揺れてる気がする。ゆっくりと意識が浮上して目を開けると、目の前に悠ちゃんのお腹があった。顔を上げると、悠ちゃんが真面目な顔で本を読んでいる。どうやら僕は、悠ちゃんの膝枕で寝ているようだ。 僕の視線に気づいた悠ちゃんが、本を横に置いて、困った様子で僕の頰を撫でた。 「玲…、辛いだろ?身体が熱くなってきてる。熱があると思う。ちょっと待ってろ」 ぼんやりとして、反応の鈍い僕に苦笑しながら、悠ちゃんが立ち上がり、棚の引き出しから体温計を取り出した。 スイッチを入れて僕の脇に挟み、アラームが鳴って見た体温計は、38度を表示していた。 「マジか…。玲、喉が痛いとか咳が出るとかないか?気分悪い?」 「大丈夫…。でもちょっと、頭痛い…」 「ん、ちゃんと休もうな」 38度という数字を認識してしまうと、だんだんと寒気がして、ガンガン頭が痛くなってきた。 僕はソファーの上で身体を丸めて、カタカタと震え出す。 すぐに悠ちゃんが僕を抱えて部屋へ行き、ベッドに寝かせてタオルケットを肩までかけた。 一旦部屋を出て、戻って来た悠ちゃんが、頭の下にタオルに包んだ氷枕を置き、スポーツドリンクが入ったペットボトルにストローをさして、僕に差し出す。僕は少しだけ飲んで、もういいと言うように首を振った。 ペットボトルを机に置いた悠ちゃんが、市販の風邪薬を僕の舌に乗せ、自分の口に水を含んで、口移しで飲ませてくれた。 口から少し零れた水と、額に浮き出た汗を拭いて、僕の額に冷却シートを貼る。氷枕とシートの冷たさが気持ちよくて、僕は小さく息を吐いて目を閉じた。 悠ちゃんの大きな手が、僕の手を包む。ベッドの傍に座り込み、心配そうに「玲…」と呼ぶ声が、眠りにつくまで何度も聞こえた。 僕は、この日から数日、熱が下がらなかった。

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