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第124話 疑心暗鬼

夜まで寝たり起きたりを繰り返していたけど、熱が下がらない。下がらないどころか、昼間よりも少しあがっていた。 食欲も全く無くなってしまって、心配した悠ちゃんが、慌てて近くのコンビニに栄養補給のゼリーやプリン、スポーツドリンクを買いに走った。 ぼんやりと部屋の天井を眺めていると、さっき出て行ったと思った悠ちゃんがもう帰って来て、すぐに僕の部屋に来た。僕の背中を支えながら、栄養補給ゼリーを飲ませてくれる。冷たいそれは、スルスルと僕の喉を通って、半分くらいは飲むことが出来た。 僕が一息ついてると、今度は薬を飲むように言われる。喉も渇いていたから、薬を飲む時に、ペットボトルの半分くらいの水を一気に飲んだ。 その後は、僕の身体の汗を拭いて、服を着替えさせてくれた。そして、額に新しい冷却シートをペタリと貼ってもらい、僕は、新しい氷枕の上に頭を置いて寝転んだ。 「玲…、早く治るといいな…。俺はずっと傍にいるから。ずっと見てるから。よく休め」 「…ん…。悠ちゃん…、手…繋いでて…」 ベッドの横にひざまずいて、僕の頰を撫でる悠ちゃんを見つめて言う。熱のせいなのか、目が潤んで悠ちゃんの顔がぼやけて見える。 悠ちゃんの手が頰を滑り、両手で僕の右手を包み込んだ。その手の温もりに安心して僕はフワリと笑うと、熱い息を吐いて眠りについた。 夜中、トイレに行きたくなって目が覚めた。 寝汗でパジャマ代わりのTシャツが濡れて、エアコンの冷気で冷えて寒い。 僕は、隣で眠る悠ちゃんの腕をそっと退けて、ゆっくりと身体を起こした。起き上がった途端に、フラリと視界が揺れる。僕は、めまいが治るまでギュッと目を閉じて耐えた。 何度か深く息を吐いて落ち着くと、ノロノロとベッドから降りて壁伝いにドアへ行く。音が鳴らないようにドアを開けて、静かに廊下へ出た。 別にそんなに静かに行動しなくてもいいんだけど、悠ちゃんを起こしてしまうと、絶対にこの前のようにトイレまでついてきて、恥ずかしいことをされてしまう。 悠ちゃんには、僕の身体の隅々まで知られているけど、恥ずかしいものは恥ずかしい。 だから、悠ちゃんを起こさないで部屋の外に出れて、ホッと安堵の息を吐いた。

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