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第129話 疑心暗鬼
ウトウトとして、咳が出て目が覚めて、悠ちゃんに背中を撫でてもらう。
そんなことを何度も繰り返していると、ピンポーンとインターフォンの音が、リビングから聞こえた。
「涼かな。ちょっと待ってろ」
「あ…、待っ…、ゴホッゴホッ…」
僕の唇にチュッと口づけて、悠ちゃんが、部屋を出て行く。もし涼さんなら僕もお礼を言いたいと悠ちゃんを呼ぼうとしたけど、咳が出て声を出せなかった。
少しして、今度は玄関のインターフォンが鳴る。玄関で待っていたらしい悠ちゃんが、すぐにドアを開ける音がした。
「涼っ、悪いな。ありが……、親父っ⁉︎」
「悠希、玲が熱出してるんだって?すぐに病院に連れて行こう」
「な、なんでっ、親父がここにいるんだよっ⁉︎」
「おまえ達が夏休みなのに帰って来ないから、俺から会いに来たんだよ。そうしたら、下で彼と会って。俺が管理人と話してるのを聞いて、おまえ達の父親だと気づいた七瀬君が、声をかけてくれたんだ。七瀬君から話は聞いた。今日、会いに来てよかったよ。さぁ、早く玲を連れて行くよ」
「ダメだっ!玲を部屋から出すなっ。涼っ、薬は?」
「持って来たけど…。熱が高いなら、やっぱり病院に連れて行った方がいい。油断してると、重症になりかねないよ?」
「七瀬君の言う通りだ。玲は、昔から身体が弱かった。寝てれば治るというものでもない。玲は…?部屋で寝てるのか?」
僕の部屋に足音が近づいてくる。
悠ちゃんの「待てよっ」という必死の声にお構いなく、部屋のドアがガチャリと開いた。
僕は、頭を上げるのもしんどくて、目だけを部屋の入り口に向ける。
すぐに父さんが駆け寄って来て、僕の顔を覗き込んで頭を撫でた。
「玲…、苦しそうだな。それに、ちょっと痩せたか…?すぐに病院に連れて行ってやるからな?」
「玲くん、大丈夫?旅行以来だね…。薬、一応持って来たけど、ちゃんと診てもらった方がいい。ちょうどお父さんも来られたことだし、ね?」
「…うん…」
僕を心配して見つめる二人を押し退けて、悠ちゃんが僕を抱きしめた。
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