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第133話 愛別離苦

目が覚めてから二日ほどは、まだ微熱があったけど、三日目にはすっかり平熱になり食欲も戻ってきた。 出された食事もほとんど食べて、合間には、拓真が持って来たおばさん手作りのクッキーも食べた。プリンはもらったその日に食べてしまった。あまり食欲がなかったけど、プリンはとても美味しくて、するすると喉に入った。 僕が目が覚めた日から、拓真は毎日来てくれた。いつも昼から来て、明るい笑顔で話して帰って行く。 悠ちゃんも、毎日午前中に来てくれた。 「俺さ…今、玲の代わりに家のことをやってるんだ。結構やることがあるよな。それを、今まで全部やってくれてたんだよな。ありがとな、玲」 そう言って笑うのだけど、やっぱり様子がおかしいように思う。 「悠ちゃん、どうしたの?僕のこと…気にしてるの?」 僕が心配気に見上げて言うと、ニコリと笑って僕の頰を撫でた。 「玲を閉じ込めたこと…悪かったとは思ってる。でも、おまえも元気になってきたし、もう気にしてないよ。ホントに…元気になってよかった…。あとは、少し太ろうな?俺は、おまえのふわふわとした肌が好きなんだ」 悠ちゃんは、僕の頰を指で軽く突ついて肩を抱き寄せる。 「ほら…肩も薄くなってる。玲、何が食べたい?おまえの好きな甘い物、何でも買ってきてやるよ」 「悠ちゃん…」 僕は、悠ちゃんの背中に腕を回して、胸に頰を擦り寄せた。 「僕が欲しいのは、悠ちゃんと過ごす時間…。一人じゃ食欲が湧かないもん…。悠ちゃんと一緒に、僕が作ったご飯を食べたい。そうしたら、いっぱい食べれるから…」 「…そうか。なら、家に帰ったら、一緒に食べよう…」 「うん…約束だよ」 「…ああ」 頷く悠ちゃんの声が、消えそうなくらいに小さく聞こえる。そのことが、僕を大きく不安にさせた。 僕は、悠ちゃんの身体に回した腕に、目一杯力を込めると、とても強くしがみついた。

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