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第137話 愛別離苦

翌日から少しずつ荷物を片付け始めて、夏休みが終わる三日前に、涼さんの家に移った。 父さんは、僕が退院してから一週間マンションにいて、僕の世話や荷物の片付けの手伝いをしてくれた。 涼さんの家に移る時も来てくれて、涼さんの両親に丁寧に挨拶をして帰って行った。 涼さんの家は、一階にリビングと和室、涼さんの両親の部屋が、二階に涼さんと涼さんのお姉さんの部屋、それともう一つ空いてる部屋があった。その部屋を僕が使わせてもらう。 僕は、僕の机とベッドは実家に送り返して、悠ちゃんの机とベッドを持って来た。悠ちゃんのクローゼットに残されていた服も、一緒に持って来た。 そんなに荷物は多くなかったし涼さんにも手伝ってもらったから、引っ越して来た日には、ほぼ片付いた。 疲れて息を吐いていると、涼さんに促されて一階に降りた。リビングで、涼さんのお母さんが、飲み物とケーキを用意してくれていた。 「玲くん、ゆっくり片付けたらいいのよ。手伝うことがあったら言ってね?」 「ありがとうございます。でも、涼さんが手伝ってくれたので、ほとんど終わりました。涼さん…ありがと」 ソファーに座り、お礼を言って冷たい紅茶を飲む。僕の好きなアールグレイの香りがとても落ち着く。 涼さんが、僕の隣に腰掛けて、僕を見てニコリと微笑んだ。 「手伝ったって言っても、荷物も少なかったしね。俺はそんなに動いてないよ。それより、今日から玲くんと暮らせることが嬉しいよ。俺は頼りになるから、いっぱい甘えて?」 「ふふっ、そんなこと言ったら、ホントにいっぱい甘えますよ?僕、甘えん坊なんです」 「全然オッケー」 手を伸ばして僕の頭を撫でる涼さんに、イタズラっぽく笑ってみせた。 僕の向かい側に座った涼さんのお母さん、幸(みゆき)さんが、僕を見て優しく微笑む。 「涼も恵(めぐみ)も優しいんだけどクールでね…、玲くんみたいな可愛い子が来てくれて、おばさんとても嬉しいの。だから、おばさんにも遠慮なく甘えてね」 「はい…よろしくお願いします」 「ふふ…素直」 涼さんもおじさんおばさんも、とても優しくていい人だ。 僕はまだまだ悠ちゃんを思ってすぐに泣いてしまう。だけど、この優しい人達に囲まれて過ごすうちに、少しずつ悲しみが薄らいでいくだろうか。強くなれるだろうか。 悠ちゃんのことを考えてしまい、ジワリと涙が目に浮かぶ。僕は気づかれないように目を伏せて、ケーキを一口、口に入れた。

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