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第138話 愛別離苦

悠ちゃんは、遠い地方にある全寮制の学校に編入したと、父さんから聞いていた。もちろん、父さんはどこの地方でどんな名前の学校かも知っている。だけど、せめて僕が高校を卒業するまでは、『悠希との約束で言えないんだ…ごめんな』と何度も謝っていた。 そのことを涼さんに話すと、優しい眼差しで、僕の頭を撫でてくれた。 「そう…。俺もどこに行ったかは聞いてないんだ。ただ、ここからはかなり遠い学校に行くとだけ…。玲くん、寂しいよね…」 僕は、鼻の奥がツンとなって涙が滲み出そうになったけど、二、三度瞬きをして笑ってみせた。 「はい…、悠ちゃんのことを考えると、とても寂しいです…。でも、悠ちゃんが僕の為を思って決めたことだから、僕も強くなろう…って決めました。だから涼さん…、僕が弱音を吐いて泣きそうになったら、ビシッと言って下さいね」 「えらいね…玲くん。わかった。俺は、玲くんをちゃんと見てるよ。弱音を吐いたら気合を入れてあげる。でも、玲くん可愛いから、厳しく出来ないかもなぁ…」 「ふふ、涼さんは優し過ぎます」 「そう?きっと玲くん限定だよ?」 「そんなことないですよ…」 僕の言葉に、涼さんが笑ってまた頭を撫でた。 僕は、涼さんの家に来させてもらって本当によかったと思う。まだ三日目だけど、ほんの少し、沈んでいた心が軽くなっている。 それに、僕の傍には涼さんがいてくれる。父さんも連絡すれば、すぐに会いに来てくれる。 でも悠ちゃんは、たった一人で、誰も知ってる人がいない所へ行ったんだ。きっと、悠ちゃんの方が寂しいはずだけど、僕の為に頑張ろうとしてくれているんだ。 明日から学校が始まる。僕は、今までよりも、全てのことを頑張ろう。一人でいる悠ちゃんを思うと心配だけど、涼さんが、「悠希は強い人間だよ。あいつが弱る時は、玲くんに何かあった時だけだよ」と笑うから、悠ちゃんを信じて、共に強くなろう。 そう強く誓って、僕は悠ちゃんの服を抱きしめながら、眠りについた。

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