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第139話 愛別離苦

二学期が始まり、涼さんと一緒に学校へ通う。 涼さんの家からは、電車に乗らなくても学校まで歩いて行ける。ただ、駅を超えた反対側に学校があるので、三十分は歩かないといけない。でも、満員電車で朝から疲れていた前のことを思うと、随分と楽になった。 学校に着いて教室に入ると、拓真がすぐに駆け寄って来た。 拓真は、僕が退院してから一度、マンションに来ている。その時に、悠ちゃんのことを話した。それに、涼さんの家に下宿させてもらうことを伝えると、「ええっ、それなら俺の家に来て欲しかった…っ」と叫んでいたけど、仕方がない。 「せめて学校帰りは駅まで一緒に行こうな…」と、なんだか随分としおれていた。 「おはよう、玲。どうだった?歩いて来るの、疲れてない?」 「おはよう。大丈夫だよ。涼さんと話しながら歩いてたら、そんなに遠いとも思わなかったし」 「そっか…。あ〜あ、満員電車も玲と一緒なら苦にならなかったのになぁ。今朝はタバコ臭いおっさんに寄りかかられて、最悪だったよ…。でも、玲に会ったら癒された」 「ふふっ、そうなの?」 朝から元気な拓真に、僕は笑いながら相槌を打つ。 拓真は、僕の顔をジッと見つめて、溜め息を吐いた。 「でも、あのマンションで玲が一人で暮らすのは、俺だって心配だしな…。玲、涼さんがいなくて一人の時は、家まで迎えに行くし、帰りも家まで送るからな」 「え〜、大丈夫だよ。でもまあ、駅くらいまではお願いしようかなぁ」 僕が首を傾げてふふっと笑うと、拓真は赤い顔をして大きく頷いた。 僕は、毎朝涼さんと一緒に学校へ通った。帰りは、終わる時間が違う日もあったので、別々で帰る方が多かった。そんな時は、拓真が駅を越えて家まで送ってくれた。 涼さんが三年になって塾に通い始めた時も、涼さんの塾がある日は、大丈夫だと言うのに拓真が送ってくれた。 毎日悠ちゃんを思って寂しかったけど、涼さんや拓真に守られながら、僕は平穏に高校生活を送ることが出来た。

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