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運命の輪~Blue Rose establish~

那智がtrinityに顔を出すようになって早数ヶ月。 気が付けば、長かった冬が終わり、春がもうすぐそこまできていた。 春を迎えれば、京平や和真は小学校を卒業して中学に上がる。 那智は中学二年生になり、神や宗司、そして宗司の友人として最近よく一緒に行動を共にするようになった高志は、三年生に。 いつの間にか、この6人で過ごす事が当たり前になっていた。 最近では、あまりに顔が売れ過ぎると面倒くさい事になる、と、以前のように気軽に外を出歩く事がなくなり、その反面、無差別に暴れまくる事をしない自分達のスタンスに賛同して慕ってくる者が増え、そんな彼らと那智達との橋渡しを和真がするようになっていた。 ちなみに那智は最近知ったのだが、皆の溜まり場となっているtrinityは、以前、神の叔父さんが経営していた店で、現在は休業中となっている為に「好きに使っていいぞ」と鍵を預かっているという。 店内の飲み物なども、叔父さん経由で補充してもらっているらしい。 そんなtrinityのカウンター前にいた那智は、何年も前からこの場所に通っているような妙に感慨深い気持ちを抱えて、隣に立つ宗司を見た。 「…ん?なんでしょうか那智さん。そんな見惚れちゃうほど俺に惚れ、」 「違います」 「………」 言葉を途中でぶった切った那智のつれなさに、思いっきり溜息を吐いた宗司。 後ろの方で和真が笑いを堪えている事に気が付いているのだろうか。 「うるさいよ和真」 ガコッ! 「痛ッ!俺なにも言ってないじゃないですか!」 どうやら気付いていたらしい。 振り向きざまに和真に向かってアルミの灰皿を投げた宗司は、それが見事に頭にヒットしたのを見てニヤリと笑っている。 相変わらずだ。 ほのぼのした空気に自然と緩む口元。 だが、那智は元より、ここにいる全員がとある事を感じ始めていた。 たぶん、そろそろ時期が来る…、と。 機が熟した事を、全員が感じ取っていたのは間違いない。 そして、その”機”は、春休みを迎えた初日、とある人物によって完全な形へと成形された。 「新しい時代を築けよ。ここからはお前達に託す」 そう言って神に派閥発足を促したのは、少し前まで裏高楼街を一手に仕切っていた蘭だった。 蘭が裏高楼街から上がって今日までの間、人材不足とでも言おうか…、力のある人間は全く以って現れなかった。 短期間で派閥の存在は権威と威力を失い、そこにいる少年達は単なる有象無象の輩と化していた。 神の出現は、その矢先の事。 凄い奴がいるという噂が出始めた早々から、蘭は神に接触をしていたという。 ちなみに、那智が蘭に会ったのはここ最近の事だ。 実物のカリスマは噂以上に周囲を圧倒するオーラが強く、そして意外にも人当たりが良かった事に驚いた事を、まるで昨日の出来事のように思い出す。 そんな蘭がふらりとtrinityに現れ、神に告げた言葉。 trinity内にいた6人は、それが派閥発足に対する言葉だと誰もが理解した。 ”時は満ちた” ”新たなる時代の幕開け” 裏高楼街に【Blue Rose】という新たな風が吹き込んだのは、3月もあと数日で終わるという頃。 その数ヵ月後、新たに現れた”蓮”という人物が【Moonless】を立ち上げる事になる。 裏高楼街に出現した巨大な2つの派閥が壁を成し、街外の裏組織に対して牽制となる程の威力を発揮する事になるのは、そのすぐ後の事。

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