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~unchangeable relation~

蘭とセイの過去。とある日常編。 *―――――――――* 「報酬は何?」 「お前なぁ…、たまには俺の為に無償でやってやろうって気持ちはないのか」 「無いよ」 「………」 セイの即答に蘭はガックリと項垂れた。 深夜。高楼街の某クラブのボックス席で向かい合って座る少年二人。 一人は背が高く体格の良い金髪。 もう一人は、背は高いものの体格は細身で真っ赤な髪。 金髪の少年、蘭は、相変わらず優しさの欠片もねぇ…、と数年来になる友人に溜息を吐いた。 溜息を吐かれた真っ赤な髪の少年、セイは、そんな蘭を見て鼻先で笑うだけ。 「18にもなった男に、なんでボクが無償で情報を提供してやらなきゃならないんだよ」 「例え俺が1歳だとしても断るくせに」 「お前が1歳とか想像しただけで気持ち悪い」 「今の俺が1歳じゃなくて1歳の時だったとしたらの話だ!!」 セイと話をしていると、話がどんどんおかしな方向へ流れていってしまう。 最初の頃は、こうやって話がずれていってしまうのは偶然だと思っていたが、今となっては故意的だとわかっている。 誰と闘りあっている時より、こうやってセイと会話をする事の方がよっぽど疲れる。 ある意味、存在自体が凶器だ。 そんな事を考えて思わずフッと笑った蘭の額に、突然ビシっと何かが当たった。 「…ッ」 衝撃の小ささの割に結構痛い。 「ニヤニヤしてんなよ、キモイ」 「…お前なぁ…」 座っている蘭の足の上に落ちた物。 それは輪ゴムだった。 指先で摘まみ持ったそれをしみじみと眺めていると、またも額に当たった同じ衝撃と痛み。 そしてまた足の上に落ちる輪ゴム。 セイを見ると、真顔で次の輪ゴムを指に装着しているところだった。 なんでそんなに大量の輪ゴムを持ってんだコイツは! いつの間にかテーブルの上に大量に盛られている輪ゴムを見て、蘭の顔に焦りと苛立ちが浮かんだのは言うまでもない。 「何してんだよ馬鹿セイ!」 「ボクが馬鹿ならお前はもう死んだ方がいいと思うよ」 「は?!そりゃどういう意味だ」 「ボクが馬鹿ならお前は今世紀最大の馬鹿だって意味」 「真面目に説明すんな!」 「自分で意味を聞いておきながら酷い言い草だよまったく」 「………」 …俺が悪いのか? ガックリと項垂れた蘭。 この裏高楼街でカリスマと呼ばれ、誰しもが尊敬と畏怖の眼差しを向ける程の人物、蘭。 そんな蘭でさえ、セイには全く敵わないというのが現実だった。

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