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第4話

 アシュレイの送る視線に、冬夜は気付かない。赤く色づいた肌は、血の巡りが良くなっていることを如実に示していた。 「俺も、今日日本に来て良かった」 「そうか…」 「冬夜に、会えたからな」  ギシリ、とベッドのスプリングが小さく軋んだ。冬夜はふと顔をあげる。すると、すぐ目の前に輝くような美貌があった。 「…っ」 「明日の朝には…国に帰る」 「そう、か」 「少し、寂しいな」  切なげに寄せられた眉は、それはもう本当に寂しそうで、何故だか冬夜も先程知り合ったばかりの友人である彼との別れが、まるで長年付き合って来た親友と別れる時のような悲痛なものに思えて来た。  あれだけワインを飲んでも、少しも酔った様子を見せないアシュレイの白い頬を冬夜は突いた。 「なんだ?思い出作りでもしたくなったのか?」 「ああ」 「携帯なら持っているから、写真でも…」 「写真は…ダメなんだ。どうしても」 「そうだったな。じゃあ、どうやって…」  冬夜がぼうっとしながら言葉を紡いでいると、ふと続きを遮られた。  薄い唇の感触によって。 「……ッ」  ペロ、と口唇を舐められてから、冬夜は今自分の身に起きている事態を把握した。  ガバリと起き上がると、困惑で声を震わせながら言った。 「思い出作りって、こういう類の…!?」 「ダメか?」 「ダメ…だろ。そんな、一夜限りの、とかさ」 (いやいやそれ以前に俺は男だぞ。それも特に美形とかではない一般的な成人男性。)  冬夜が混乱のあまりズレたことを言いつつ、アシュレイの反応を伺った。美貌には真剣さ溢れる表情が浮かんでいた。本気なんだ、と冬夜が悟ると何故かそれほど拒否する気持ちが湧いて来なかったことに驚いた。むしろ、自分でもいいのか、という気持ちが優った。そんな冬夜に、アシュレイが問いかけた。 「俺とするのは、いやか?」 「…………不思議なことに、嫌じゃないんだ。お前は、むしろ俺とそんなにしたいのか?」 「したい」 「即答かよ!……ううん、ワンナイトラブとか、絶対にダメだって思っていたんだけどな…」  冬夜が迷っているような素振りを見せている間に、アシュレイは了承の言葉を待たずにベッドに冬夜を押し倒した。  意外と強引な人なんだな、とぼんやりと考えながら降りて来たキスを冬夜は黙って受け入れた。  

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