5 / 26
その5:変態ということを自覚させましょう
ヤクザの屋敷の家政婦として働くようになって、気づけば1週間が過ぎようとしていた。その間、はじめは何度苑を正座させただろうか。
着替えを盗撮しようとしていて、発見後、正座させての説教。
入浴中を盗撮しようとしていて、発見後、正座させての説教。
夜部屋に忍び込もうとしていて、発見後、正座させての説教。
この他にもいろんなことをしようとしていて、発見後に正座をさせて説教した。
何度も何度も正座させての説教だが、変態の苑には通用しないらしい。
はじめに正座で怒られる度に、幸せそうな笑みを浮かべている。
「苑さん。いつも本気で言ってるんですけど、止めてください」
「何を?」
「だから、俺の盗撮とかですよ!!」
「は!?はじめくんを盗撮なんて、いったい誰がっ!!」
「あんただよ!!」
今さっき苑から奪い取ったカメラを、はじめは床に思いっきり叩きつけた。その衝撃でカメラが壊れたみたいだが、はじめにそれを気にしている余裕はない。
「苑さんよぉ、お前はいったい何回言われれば理解するんだよ!!自分が変態だって!!」
「だから何度も言うが、俺は変態ではない。恋人の可愛い姿を見ようとして何が悪い」
「だから、恋人じゃないって言ってるだろうが!?」
何度そう言っても、苑に話が通じることはなく。はじめは若干諦めムードだったが、今回のは本当に厳しく行かないと、今後が危険なのだ。
何せ今回は、はじめの“ひとりえっち”の様子を納めようとしていたのだから。
「苑さん。俺真面目に言ってるんで、本当にやめてください」
「…………………分かった。はじめくんがそう言うなら、やめるよ」
苑がそう宣言したので、やめてくれる、やった!とはじめが思ったのも束の間。
「じゃあ今度から直接見ることにする。撮ったりはしないから、心配しないで」
「そっちもダメじゃーーー!!この変態ヤクザがっ!!」
「だから俺は変態じゃないってば」
はじめには、苑に自分は変態だと認めさせるか、自分が諦めるしかないという道しか残されていないようだった。
ともだちにシェアしよう!