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その10:たまには受け取ってあげましょう
苑がお小遣い制になってから、高級品のプレゼントがグンと減った。たまに、毎日のお小遣いをためてプレゼントされることもあったが、必要なものだったら受け取り、要らないものだったら受け取らないを繰り返していた。
そうしていたら、組員にいつの間にか苑とはじめが結婚したと勘違いをされ。組員が気を利かせて、部屋を一緒にしようとした時には本気で反対した。
「全く。はじめ様はいつになったら、組長を受け入れてくださるのですか?」
「いや、絶対一生受け入れないです。たぶん」
「たぶんということは、少しは惹かれているのでしょう」
晩ごはんの準備中のことだ。仕事のため、屋敷にいない苑の代わりに清嗣がはじめの先生となり晩ごはんを作っていた。今日は餃子がいっぱい食べたいという苑のリクエストで、2人でせっせと餃子を作っている。
流れ作業で、清嗣が生地に種を乗せ、それをはじめが不器用ながらも餃子に見えるように種を包む。
何個も作っているうちに余裕が出てきての、あの会話だった。
組員からすれば、早く2人が恋人同士になればいいと思っているのだ。男同士とか気持ち悪いと思うわけもない。何せ、苑がはじめのストーカー時代をよく知っているのだ。
自分達を受け入れてくれた組長である苑の幸せを願うのはもちろんのことで。
だからこそ、こんな風にジリジリとはじめを急かしてくるのだ。
最初の頃は、絶対にあり得ないと思っていたのだが、本気で苑のことを考えるようになった。
変態だが、はじめの前ではヤクザらしい姿を見せないようにしているところとか。稗田組の為、組員の為に動いているところとか。
そんな姿を毎日のように見ていたら、惹かれない訳がないのだ。
「ま、あ、惹かれているのは確かですけど」
「だったら、」
「それとこれとは話が別です」
最後の1個を包み終わった時だ。ちょうど苑も帰ってきたようで、ドダドダと足音をたててキッチンに来た。
「はじめくん!見て、ほらプレゼント」
また高級品のプレゼントか!と一瞬思ったが、苑から差し出されたのは花束だった。
「これ、」
「いつもありがとうって印のプレゼントなんだけど、受け取ってくれると嬉しいな」
少し照れくさそうに言う苑の姿にキュンとして、花束で自分の顔が隠れるように受け取った。
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