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その13:プレゼントを選びましょう

「いや、さ。ただ、そろそろお礼を自分もしたらいいかなって思っただけだし!苑さんみたいに、プレゼントをあげないなーとか思ってないし!お礼だから、お礼!」 ブツブツとそんな独り言を呟きながら、はじめは街中を歩いていた。もちろん、周りは意外と大きめなボリュームで独り言を呟いているはじめを、おかしな奴だ的な視線で見ている。しかし、はじめはそれに気づかない。 そして、独り言を長々と呟きながらとある店の前で止まった。 そこは、大人な男性をターゲットにした雑貨屋さん。ネットでいろいろと調べたはじめが、ここだと見つけたお店だ。 「……………ここだな」 はじめは店を前にして、1度大きく深呼吸する。そして、意を決して中に入った。 いらっしゃいませと、かっこいいダンディーな男性店員がはじめを出迎えてくれた。はじめの他にも、ちらほらと客がいる。 店に入ってきたはじめに、店員が近づいてきた。しかし、何も言ってほしくないはじめはそそくさと店員から逃げて店を物色する。 どれがいいだろう。どれをプレゼントしたら、苑は喜んでくれるだろう。 そんなことを考えて30分。ついに、これだ!というものを見つけた。 シンプルな、黒の置時計。これなら、苑の部屋にもよく似合うだろう。 苑のために選んでいるという事実がどこか恥ずかしくて、いつもより早いスピードでレジに並び、会計が終わると早いスピードで店から出た。 「……………喜んでくれるといいな」 きっと苑のことだから、自分からのプレゼントをものすごく喜んでくれるだろう。組員に自慢しまくる感じで。 そんな苑の姿を想像して、はじめも気づかないうちに顔が緩んでいた時だ。 少し離れた場所で、知らないおっさんと歩く苑の姿を見た。その時の苑の表情は、幸せそうに、そして楽しそうに笑っていて。 「―――――――――っ」 ズキリと心が痛んだ気がしたが、はじめは勘違いだと思うことにして。苑から視線をそらして、逃げるようにして走って帰った。

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