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その15:プレゼントを渡しましょう

今日見たおっさんが、苑の同業者というのは分かった。しかし、何で一緒に楽しげに買い物に行ってたんだ? はじめがホッとしたのも束の間、次の疑問が生まれた。別に買い物なら1人でも十分だろう。それなのに何で、苑はおっさんと行ったのか。 せっかく、清嗣に同業者と聞いてホッとしたのにすぐにムカついてきた。 いつもいつも、はじめがウザいと思うぐらいいろいろと話してくれるのに。今日はこんなことをした。明日は、こんな人と会うんだ。こんなことをするんだ。 それなのに、はじめは今日のことを苑から1つも聞いていない。 認めたくはないが、それが少し寂しかった。 苑は変態だが、はじめを十分に大切にしてくれているのはよく分かる。だからこそ、内緒で会われたのは少しだけ悲しく感じた。 「はじめ様?」 茶碗を洗いながら沈んだ顔をしたはじめを心配して、清嗣が顔を覗かせた。しかし、清嗣の顔はニヤニヤと楽しそうで。はじめの気持ちは、清嗣にバレバレだというのがよく分かる。 いろいろと負けた感じがして悔しいが、はじめだって男。男らしく腹をくくって認める時もある。今がその時だ。 しかし、やっぱり清嗣に素直に話すのははじめのプライド的に許せなかったので。ツンッと無視することにした。 「はじめ様?だから、どうしたんですか」 「………………………」 「はじめ様。ほら、恥ずかしがってないで。話してくださいよ」 「………………………」 こんな感じのやり取りがはじめと清嗣の間に生まれてしばらくたった頃、いつの間にか苑が帰ってきていたらしい。ムスッとした表情を浮かべ、ジッと2人を見ていた。 「あ。おかえりなさい、組長」 「……………清嗣、何はじめくんとイチャイチャしてるんだ」 「イチャイチャと言うよりも、はじめ様が組長にプレゼントを買ったらしいんですけど。それを渡すのが恥ずかしいと言っていたので励ましていました」 何言ってるんだ!はじめはそう思ったが、時は遅く。キラキラとした笑顔を浮かべた苑が、はじめに向かって手を差し出していた。 後で、こっそりと部屋にでも置いておこうと思ったのだが仕方がない。はじめは、渋々、そして恥ずかしそうにプレゼントを渡した。 「まぁ、その。いつもお世話になってるから」 あげる。そう一言添えて、はじめはプレゼントを苑の手に乗せた。はじめがあげたプレゼントを、苑は1度胸にギュッと抱き締めて。 そして、今まで見せたことのないような幸せの笑みをはじめに見せたのだ。

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