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その21:想いを確かめましょう
苑と少し距離を置く為、信之助達の元に身を寄せることになったはじめ。知らない相手で、絶対上手く行くとは思えなかったし、苑がすぐ迎えに来るだろうと思っていた。
しかし、信之助を含めた秋島組の皆ははじめに優しかった。仲間のように受け入れてくれた為、はじめも同じように接することが出来た。
でも、なかなか苑は迎えに来てはくれなかった。
「苑さんを待ってるの?」
「あ、」
ぼんやりとはじめが外を見ていると、後ろから信之助が声をかけてきた。初めて信之助と会った時、何だこのおっさん。と思ったのに。一緒に過ごすうちに、懐の深い優しいおっさんだと気づいた。この人になら、何でも相談してしまいと思えるぐらいに。
「……待ってないって言ったら嘘になりますけど。まだ、怖いかもしれません」
「静夏さんの存在を知るのがだろ?」
「………はい」
そう。信じると決めても、やっぱり怖いのだ。苑にとって“静夏”という人物がどういう存在かを知るのが。静夏という存在を知らないはじめからしても、特別だということが分かる。
苑と静夏。その2人のことを考える度に、自分が沈んでいくのが分かる。
でも、そんなはじめを見て信之助がクスクスと笑った。
「本当、はじめくんは苑さんのことが好きなんだね」
「え?」
「怖いって思うのは、本当に大切に想ってるって証拠だろ。どうも思っててなかったり、本気じゃなかったらきっと怖いとか思わない。静夏さんよりも、自分の存在が苑さんの中で小さいのがはじめくんは怖いんだろ」
「あ、」
信之助の言葉に、はじめは目を見開いた。
そうだ。自分は、それが怖かったのだ。苑の中で、静夏の存在よりも自分の存在が小さいのかもしれないという事実が。
苑を好きだと認めた。だからこそ怖かったのかもしれない。もし、静夏とはじめどちらかを選ばないといけなくて。苑が静夏を選ぶのかもしれないというのが。
だって好きだから。
誰にも負けないぐらい、苑のことが大好きだから。
「――――――2人に、何があったか知らないんです」
「うん」
「苑さんにとって、静夏さんが特別だって分かります」
「うん」
「だけど……っ」
はじめの瞳から涙が溢れて、その後の言葉は続かなかった。でも、信之助は分かっているかのように微笑んで、そっとはじめの涙を優しく拭った。
早く、早く苑とはじめの想いが通じ合うようにと願いながら。
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