「ここは、どう？　気持ち良いかい？」 　乳輪の際を指先で刺激して遣る。ぷるぷる、と手の先で乳首が尖って行くのが、絶景だな、と思った。 「気持ちぃ、けど、」 　俺の手を掴んで口元まで導く学君は、今までの刺激で、既に、何処も彼処も赤く染まっていて、本当に熟れた桃のように美味しそうだった。言い淀む声すら、桃の果汁のように蕩けている。そして、俺は、桃が大好物なのだ。 「そうだね、もっと、直接的な刺激が、欲しいよね？」 　学君が口に出来なかった言葉を俺が口にすると、潤んだ目が返事をした。本当に、目と言う物は、口程に物を言う。優しく下唇を摘まみ刺激を与えながら、反対の手で立ち上がった可愛らしい乳首を摘まむと、悲鳴のような吐息のような声が、学君の口からは漏れた。 「さっきも言ったけど、声は、抑えないで。声が聞こえないと、俺も、君が感じているのか、それとも痛がっているのか、嫌がっているのか、判断出来ないから」 「う、分かって、る、けど……恥ずかし……」 　益々赤く染まる頬に、そっと優しく唇を当てて、俺は指先に意識を向けた。まだ柔らかい乳首は、なぞるごとに硬さを増して行く。乳輪も含めて四周撫でた所で、ぴん、と立ち上がった事に満足して、口角が上がってしまう。ああ、こんな所も、学君は、本当に理想的だ。 「も、もう、あのっ、要さんっ！」 　しまった。余りにも可愛過ぎて、加減を見誤ったらしい。学君の声には、哀願よりも悲壮感の方が強く滲んでいた。ごめん、と心の中で謝って、いきなり深いキスをする。同時に、指先を蠢かせた。 「んんっ、んっ、ぁ、ふ、っ……」 「そのまま、感じて……」 　息継ぎの合間に声を掛ける。学君は、素直に俺からもたらされる刺激全てを受け入れた。びくん、びくん、と身体が跳ねる。それを追い掛けながら、指先で乳首の先を捏ね、乳輪ごと乳首を揉む。程好い弾力が、本当に、俺の手にぴったりと合うな、と思った。頃合いを見て唇を離す。 「あっ、やあっ、あっ……ひぅ、」 　可愛らしい声が、引っ切り無しに唇からは漏れた。ぞくぞく、と背筋に快感が走る。ああ、sexをしている、と改めて感じた。軽いキスを顔中に贈りながら、俺は、反対側の胸にも手を伸ばす。こちらは、僅かしか反応していなかった。学君は、マスターベーションの時に胸は触らないタイプなのかもしれない。少なくとも、今は。 「可愛いね。本当に、素敵だ。何処も彼処も、学君は、俺の理想だよ」 　鼓膜に直接波を送るように、耳朶に触れながら声を掛ける。それにすら、感じてしまったようで、びくん、と身体が一際跳ねた。 「や、も、そんな……分かんな……ぁぅっ！」 　遠慮無く両胸を手の平で撫で、乳首を指先で捏ね、そして、全体を、手全部を使って愛撫する。男の胸は感じない、もしくは、感じ難い、なんて言う人も居るが、それは間違いだ。上手く愛撫して遣れば、こんなにも沢山の反応を返してくれる。俺は、俺の手の中で次から次へと姿を変える学君の胸に夢中だった。 「あっ、あ、ああ、ふっ……も、もう、助けてっ！」 　必死になって俺の腕に縋り付いて来る学君は、もっと愛撫を続ければ、恐らく、胸だけでも極められる体質なのだろうが、初めてのsexでそこまでするのは酷だろう、と判断して、俺は片手をゆっくりと下ろして行った。 「ここ、触って、欲しかった？」 　刺激し過ぎないように、あくまでも優しく、陰茎をなぞるように手にする。陰茎はカウパー液で、しとどに濡れていた。本当に、俺好みの、良い反応だった。 「ああっ、うん、うんっ、ちんこ、ちんこ、触って！！」 　爆発するかと思った。勿論、俺の陰茎が、だ。すんでの所で堪えたが。それ程に、学君の口から零れた言葉には、威力があった。可愛らしい薄い唇から零れる卑猥な言葉と言う物は、時として、何よりも強い刺激になり得るのだ。 「要、さん！　ちゃんと、触ってっ、お願ぃ……擦って、欲し……」 　ぼろり、と学君のまなじりから雫が落ちる。その美しい光景を眺めながら、俺は、ごくり、と唾を飲んだ。はー、と深く息を吐く。そうしなければ、俺は我を忘れて襲い掛かりそうだったからだ。けれども、声を掛けて安心させねば、と思う。 「学君っ！」 　だが、俺の口からは、それしか、吐き出す言葉は無かった。手全体を上下に動かす。それだけが、今、俺のすべき事の全てだった。カウパー液の力を借りて、俺の手は如何にも正しく滑らかに学君の陰茎を、いや、学君が言う所の、ちんこ、を刺激していた。手の中で、どんどん形を変えて行く学君の分身の姿は、途轍も無い愛おしさを、俺の中に溢れさせる。 「あっ、あっ、あっ、ぃいっ！　かなめさっ、俺、俺、っ……」 「学君、学君っ、俺の事も、触って、くれないか？」 　俺の身体の下で美しく華麗に、そして何よりも、淫らに熟れて行く学君を見て、俺は耐えられずに彼の手を取って自分の陰茎にと導いた。一瞬、びく、と震えた手は、しかし、そろそろ、と躊躇いがちに俺の陰茎を覆ってくれる。それだけで、多幸感に溢れて、極めそうになった。 「ぁ、かなめさんの、……おっき、」 「っっ！！　学、君っ！！」 　破壊力の強い言葉を至近距離で聞いて、更に、射精感がいや増す。必死で奥歯を噛み堪え、俺は、学君の愛らしい分身を高みに導く事だけを考える事にした。 「ああっ、気持ち、きもち、良い、よおっ、かなめさんっ、かなめさんっ！！」 「そのままっ、一緒に、はっ、イこうっ！！」 　陰茎を握っている手は上下に、胸を弄っていた手は円を描くように。片方は激しく、片方は緩やかに、刺激を続ける。びくんびくん、と震える学君の陰茎は、大きく育っていた。 「あっ、あっ、はっ、イっちゃうっ、おれ、おれ、も、」 「良いよ、イってご覧……はっ、ほら、イって……」 「ああああっっ！！」 　俺が声を掛けると、大きく仰け反って、学君は勢いよく俺の手の中で果てた。その美しさ可憐さ妖艶さと言ったら。本当に、筆舌に尽くし難い物があった。どろり、とした精液が手を温かく濡らし、俺は、何とも言えない愉悦を感じていた。勿体無かったが、舐め取るのは学君には刺激が強過ぎるかと思い、ヘッドボードに置かれていたティッシュペーパーで手早く拭き取る。 「気持ち、良かったんだね。嬉しいよ……」 　俺が正直な感想をしっかりはっきり伝えると、学君は、閉じていた目を開け、あの甘い淡い色合いの瞳で俺を見つめてくれる。欲望に蕩けたその色合いは、また、壮絶な色香をまとっていた。どくん、と学君の手の中で、俺の半身が膨れ上がる。 「あ、はっ、は、ぅん……すげー、気持ちぃ、……」 　俺の物言いに羞恥心を抑えられたのか、はっきりと言葉で示されて、益々俺の心は満足感で満たされた。だが、身体の方はそう言う訳にも行かない。学君の手の中で、明らかに存在を主張していた。 「あの、その、要さんも……」 「イかせて、くれるかい？」 「俺、きっと、下手だけど……」 　おずおず、と言いながら見上げて来るのが、また、堪らないと言う事を、きっといつか言葉にして伝えようと思いながら、俺は学君の与えてくれる刺激に身を委ねた。 「そんな事、無い。上手だ。とても、気持ちが良いよ……」 　正直に言うと、ただ上下に扱かれるだけの動きは、とても拙かったが、それでも、それを学君がしてくれている、と言う事が快楽を俺に与えてくれた。息が乱れて来る。 「うん、あの……」 　たどたどしい声が鼓膜を揺らして、俺はゆっくりと閉じていた目蓋を押し上げた。視界いっぱいに、愛くるしい学君の顔が見えて、嬉しくなる。思わず唇を寄せると、覚えの良い教え子の学君は、俺と同じ動きをしようとしてくれる。それだけで、本当に堪らない気持ちになった。 「何、だい？」 　口付けの後、問い掛ける。困ったように一瞬眉根を寄せた学君は、濡れた唇をそっと開いた。 「す、好きっ、っ、て、うわっ！！」 「くっ、はっ！！」 　我慢など、出来よう筈も無かった。学君の手の平いっぱいに、俺の精液が飛び散っていた。不覚だった。それもそうだろう。あの顔で、あの声で、あんな事を言われて、どうにかならない方が、どうかしている。しかし、本当に、不覚だった。 「学君……」 「そ、その、あの……えっと、よ、良かった？」 　羞恥から声が低くなったのをどう捉えたのか、不安げに学君が聞いて来る。なるほど、そう来たか。ならば、俺の取るべき行動は、ただ一つだ。にっこりと微笑い掛けると、学君の手を取って、ねっとりした俺の精液を手早くティッシュペーパーで拭き取った。 「途轍も無く、ね。でも、」 　言いながら、学君の上に本格的に乗り上げる。学君は瞠目した後、何故か、きょろきょろと、左右に目を動かした。 「で、でも？」 「二回目は、もっと気持ち良くなれると思うんだ、俺も、君も、ね？」 「えっ、えっ、あの、要さん？」 「何かな、学君？」 「ま、待って欲し、」 「そうだね、俺は待てないかな」 　もう一度、今度はしっかり目を見て微笑い掛けると、俺は、学君の良く動く口をしっかり塞ぐ為に、唇を寄せたのだった。