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第17話 愛を注ぐ

 今夜の始まりは、彼が前々から見たいと言っていた映画鑑賞から始まった。インターネット動画配信サービス全盛期の今、余程の最新作で無ければ、基本的にインターネットを通じて何でも見る事が出来る。彼の言っていた映画も、旧作だった為、俺が契約している動画配信サービスで簡単に見る事が出来た。なかなか渋い選択の映画で、俺も興味深く見る事が出来た。 「退屈じゃなかった?」  俺がこの類の映画を見ないと言っていた為だろう、不安げに訊ねて来る彼の髪を何気無く梳いて、如何に映画が面白く興味深かったかを語ったら、学君は瞳をきらきらさせて頷いてくれた。 「そうなんだ! SFってひとえに言っても、この世界観はやっぱり唯一無二なんだよな。それに艦長の格好良さも良いんだけど、脇役達がまた良くて!」  そこから、熱く一時間程語られてしまったのは、流石に予想外だったけど。 「学君。そろそろ、寝ようか?」  我慢出来なくて俺の方から促したら、学君はぱっと頬を赤らめて一瞬押し黙り、それから、小さく頷いてくれた。 「じゃ、じゃあ、準備、して来る」  小さな声がそう言うのを聞いて、どきり、と胸が跳ねる。今日は、最後まで行けるだろうか、と俺の胸も期待で膨らんだ。  準備、とは、当然、直腸洗浄の事だ。挿入を伴うsexをする際には欠かせない準備になる。勿論、彼の負担の事を考えて俺もSafer sexは万端にするつもりだけれど、直腸洗浄は受け容れる側のマナーの一つだった。いつかは、それも俺に遣らせてくれるくらい信頼を寄せて貰えるようになると嬉しいけれど、人によっては嫌がる人も居るから、まあ、それは追々と言った所か。  学君とは、この一ヶ月で、何度も身体を重ねていた。その度に、直腸の拡張を続けている。前回、漸く三本の指を飲み込めるようにはなった。しかし、未だに直腸での快感は鈍くて、前立腺マッサージで快感を感じると言う程度だった。本当は、直腸は何処も敏感に出来ているから、何処に触れても感じてくれるようになると一番嬉しいのだが。そのくらい開発出来れば、いよいよ挿入を伴うsexへと突入出来る。俺は、そこまで待つつもりだった。 「あの……準備、終わったけど……」 「ああ、じゃあ、俺もシャワーを浴びて来ようかな。少し待っていて」 「うん。待ってる」  こくん、といとけなく頷かれて、下腹部がずきりと痛むような気がした。彼の動作のいちいちが俺の性癖に刺さるのだ。本当に、可愛くて愛おしくて堪らない。  手早くシャワーを浴びて、彼の為に沸かした湯に浸かる。我が家には、定期的に家事代行サービスを入れているから、自分で洗わなくても良いのだが、学君が来る日は念入りに風呂場も洗うようにしている。この湯に、彼も浸かったのだな、と思うと、俺の陰茎は簡単に熱を持ってしまうが、ぐっと奥歯を噛んで堪えて、冷たい水を浴びてから、急いで彼が待っているリビングルームに向かった。  ぼんやりとソファに三角座りになっている彼は、何処か幼くて可愛らしい。広い場所が落ち着かない、といつもソファの端に座っているのすら、返って俺をその空いている場所に迎え入れてくれているようで愛おしくなってしまうのだから、恋とは本当に愚かな物だ。 「お待たせ、学君」  びく、と身体を震わせて、ゆっくり俺を振り返った学君は、ほんのり顔を赤く染め頷いた。 「お帰り、要さん……」  ああ、堪らないな、と思う。こんな風に彼がいつも俺を迎え入れてくれたら、どれだけ良い事かと思わないでもない。でも、多分、今はそれを言い出す時じゃない。未だ早い。もっとずっと彼に、彼の心の中心に近付いて、俺を全て受け容れて貰ってから話して行こう、と思った。だから、俺はごちゃごちゃ言わず、ただ一言こう言うのだ。 「ただいま、学君」  うん、と小さな声で返してくれた俺のパジャマを着た学君は、酷く色っぽくて、俺は胸どころか身体中熱くなってしまう。急いてしまう気持ちを落ち着けて、そっと彼に近付いて、腕を取り立たせた。そのまま口付けをしてしまいたくなるが、我慢して頭を撫でる。 「ベッドに、行っても良いかい?」 「うん……行く……」  どうも直接的な誘い文句は苦手らしく、学君はこんな台詞にも顔を赤くしてしまうのだけれど、以前付き合って来た相手とはどうしていたんだろう、とこんな時疑問が浮かんでしまう。俺は、前の恋人達にも色々な誘い文句を駆使しベッドへと誘導して来た。中には「言葉じゃなくて態度で示して!」とはっきり言って来た子も居て、その子が相手の時は、いつも抱き上げてベッドに連れて行かなければいけなくて、少しだけ苦労した覚えがある。学君は本人の訴え通り相当な初心者だとは思うけど、流石に、誰とも付き合って来なかった訳では無いだろう。まあ、片手で足りる程度だとは思うけど。初めての時、バニラセックスをsexと認識してくれていなかったから、もしかすると触り合いの経験も余り無いのかもしれない。そうだとしたら、嬉しく喜ばしい事だが。 「照明は、いつも通り、少し点けていて良いかな?」  ベッドルームに入り、彼をそっとベッドに座らせてから問い掛けると、こくり、と頷かれた。学君は俺と同じで、完全に暗い状態でのsexは苦手らしい。俺は、単に相手の快感の状態を見ないと不安だからだけど、学君も顔が見えないと何が起こっているか分からなくて不安だから、と前に小さな声で教えてくれた。こんな所も、可愛くて困る。 「じゃあ、しようか?」 「うん……」  照明を落として、足元の間接照明だけにすると、俺もベッドに乗り上げた。学君は、意外に積極的で自分からパジャマのボタンを外してくれる。その仕草が、何とも言えず可愛らしくて、俺の下腹部が窮屈になる為、目の遣り場に困るのだ。結果的に、俺も自分のパジャマのボタンを外す事になる訳だが。 「学君……」 「んっ、要、さん……」  パジャマを脱ぎ終わらない内に、俺の方が余裕が無くなって、学君の口に吸い付いてしまったのは、ご愛敬と思って欲しい。愛おしさで気が狂いそうになるのだから、仕方が無い。  ちゅ、ちゅ、と最初は優しいキスを贈って、徐々に彼の唇を割って、彼の中に侵入して行くのも、楽しみの一つだ。自分とは違う体温を直接舌で感じるのは、手や身体で彼を感じるのとはまた別の楽しみが有った。唾液を啜って、最後にもう一度軽いキスをすると、学君は俺を見上げて来る。 「要、さん……も、脱いで良い?」  もぞもぞ、ともどかしそうにパジャマの下を穿いたままの膝を擦り合わせる彼は、キスだけで陰茎を勃たせるくらい感じ易くなっている。これも、俺が開発したのかな、と思うと感慨深い物が有った。勿論、その真相は確かじゃないけど、きっとそうだろうと思う。 「俺が脱がせるよ」  さらさらの柔らかい、未だ少し濡れた髪を乱しながら、もう一方の手でさっとパジャマのズボンを剥いでしまうと、自分の物も脱ぎ去った。途端に、不服そうに唇を尖らせる学君の顔に、またキスの雨を降らす。きっと、不服なのは、最後の一枚の下着を残しているからだろうと思う。でも、甘く勃った彼自身の形が透けて見えるのは非常に卑猥で気に入っていて、俺自身も熱く滾ってしまうのだ。直接性器同士を擦り合わせるのは気持ち良いが、下着越しに触れ合わせるのも悪く無いと思うのだけれど。 「これ、嫌いじゃないだろう?」  腰を擦り付けて、俺自身を彼の勃起した下腹部に当てると、一瞬、困ったように顔を背けた学君は直ぐに、ぐい、と俺の後頭部に両腕を回して引き寄せて来た。俺は、勿論、抗う事無く近付いて来た彼の唇を受け容れる。学君のキスの仕方は、嬉しい事に俺と同じだ。全く一緒と言う訳では無いが、ほぼ同じ動作をされるから、きっと真似されているんだろうな、と思うと心を掻き毟りたくなる程くすぐられる。愛おしくて恋しくて大切で。 「学君、キスも良いけど、俺は、君にもっと触れたい……」  今夜は、俺の方が我慢が出来なくなり、手が勝手に動いてしまった。脇腹を撫でたり薄い腹筋をくすぐったりする。 「ん、いっぱい、触って……」  だと言うのに、学君は煽るような台詞を言って来るから、困ってしまう。こう言う所を見ると、本当は経験が少ないと言うのは嘘なんじゃないかと思うが、身体は全く開かれていなかったから、本当なのだろう。逸る心を抑えながら、首筋を伝って胸に行き着く。いきなり乳首に触れずに、そっと乳輪を撫で、目立たない胸筋を撫で摩る。 「あっ、要さ、もっと、ちゃんと触って!」  だけれど、学君は、乳首自体を弄られるのが殊の外好きらしい、と最近知った。勿論、乳首だけで極められる程では無いが(後一息、と言った感覚は有ったが)、カウパー液はしとどに溢れされるくらいだから、本当に好きなのだろう。勿体付けずに、ぱくり、と口に咥え、舌先で乳首を転がし、乳輪ごと強く吸って遣ると甘い声が漏れた。 「あっ、はっ、んっ……良い……」 「学君、これと、これは、どっちが好き?」  決して意地悪な質問と言う訳では無く、より感じて貰いたくて、乳首を舐めしゃぶるのと噛み付いて少し引っ張るのを交互に行うと、ああん、と甘い声が返って来た。 「んっ、どっちも、好き……」  学君は素直に返してくれた。一通り左胸を楽しんだので、右胸も味わいつつ、俺は自分の下着を脱ぎ、下腹部をさらけ出した。同様に、学君の下着も剥ぎ取ってしまう。擦り付けた事もあって、下着にカウパー液がたっぷりと付いていたので、これはこのまま洗濯機行きだろう。ふふ、と口の中だけで笑うと、それも刺激になったのか、学君は俺の下で身悶えた。 「気持ち良いかい?」 「ぅん、良い。から、早く、して……」  もっと強い刺激を求め、学君が声を出す。その少し鼻に掛かった声が、やっぱり、好きだなと思った。 「先に一度イっておくかい?」  腹筋や脇腹を唇で撫でながら問い掛けると、学君は、ふるふる、と頭を横に振ったみたいだった。ちらり、と見上げると視線が絡み合う。飴色の瞳は、やっぱり舐めしゃぶりたいくらい綺麗で素敵だった。 「俺、保たない、から……もう、後ろ、して欲しい……」  控えめな声が、それでも、はっきりと言うのを聞いて、今直ぐにでも俺は自分自身を突っ込んでしまいたくなったが、当然、そんな事は許されない事だ。学君が言っているのは、直腸の拡張の事だろう。前回は、指三本まで飲み込めたから、今回は、快感を終えるくらいの余裕は有るんじゃないだろうか。それを期待したい。 「じゃあ、触るよ? 先ずは、一本から行こうか」  健気にもカウパー液を垂らす学君自身には触れずに、両脚を立てて貰うと腰の下に枕を差し込む。当然、学君の秘所は俺の目の前に露になった。ベッドのヘッドボードにあらかじめ置いてあった無味無臭のローションを手に取り温めると、指全体にまとわせる。そして、そっと一本を秘所に差し入れた。 「あ、んっ……」  違和感が強いのか、学君の声は非常に控え目だ。ぐ、と身体を伸び上がらせ、彼の顔を見ると、苦痛を感じている訳では無さそうだった。ちゅ、と思わず額に吸い付いてしまうと、学君は一瞬瞠目し、その後おかしそうに笑ってくれた。俺も、思わず笑みが浮かぶ。眩しそうに俺を見る学君の方が、よっぽど可愛くて素敵だと言うのに、学君は本当に俺の顔が好きなんだな、と思った。でも、彼に好かれて嬉しいと思う自分も居て。もう一度、我慢出来ずにたっぷりと口付けを楽しんでから、指を動かしてみる。 「あっ、……んっ、要、さん……」  秘所の淵を揉むように親指で擦りながら、中指を何度か抜き差しすると、ローションのぬめりも有りスムーズに指は動いた。ふと、今までとの違いが指に伝わって来る。ナカがゆっくりとうねっているのだ。 「あっ……か、要、さんっ、俺、変っ!!」 「何が、だい?」  カウパー液の溢れ具合から、彼がこの動きに少し快感を得てくれている事を俺は分かっていたが、しっかりと確認しておきたくて問い掛けると、学君は顔を真っ赤にして首を何度か横に振った。 「あっ、あっ、だ、だって、ああっ、何か……いつも、より、あっ……」 「感じてくれて、いるんだね?」 「ぁんっ、あっ……わ、分かんな……」  不安げに俺の腕に縋って来る学君にもう一度、キスをして、俺はそっと指を二本に増やしてみた。途端に、学君の身体が強張るのが分かった。 「そんなに、怖がらないで……俺を感じて?」 「あっ、あっ、か、要、さん……んっ」  ローションを注ぎ足す事も忘れずに、彼のナカをただ行き来する動きを続ける。戸惑いの声が甘い声に変わるまで、そう時間は掛からなかった。変わらず、指にはナカのうねりが伝わって来ていた。 「学君、感じているね? もっと、気持ち良く、なろうか?」 「あっ、あんっ、あっ……要、さ、俺、変じゃ、ないっ!?」 「大丈夫、とても、素敵だよ。こんなに感じてくれて嬉しい。君の前も、気持ち良いと、素直な声を上げているよ」  声を掛けながら、そっと学君の陰茎に触れると、途端に張り詰めた感覚が強くなった。学君の二つの宝珠もぱんぱんに張っていた。これは、と思う。 「このまま、マッサージをしながら、イってみようか?」 「やっ、あっ、で、でも、怖ぃっ!」 「大丈夫。気持ち良いだけだ、何一つ怖い事は無いよ……」  俺は、今まで触れて来なかった彼の前立腺を二本の指先で挟むと、揉みしだくように動かし始めた。そして、もう片方の手を学君自身に軽く添え、上下に動かす。 「あっ、ああっ、はっ、もう、もう、俺、俺……」  びくんびくんとナカと外で同時に脈動を感じる。俺の顔は自然と微笑んでいた。 「良いよ、イってごらん」 「ああああああっっ!!」  俺が耳元へ囁くと、存外俺の声にも弱い学君は、甘い声を上げながら吐精した。びゅくびゅくと手の中に白濁が飛び出して来る。同時に、きゅうきゅう、とナカに納まっている俺の指先も締め付ける感覚がして、俺は嬉しくて喜ばしくて、それから愛おしくて、圧し掛かるように学君に身体を擦り寄せ、何度も何度も顔中にキスの雨を贈ったのだった。 「学君、本当に、本当に素敵だったよ。いや、今だってとても素敵だ。愛している」  キスだけでは伝え切れなくて、言葉も幾つか口にする。学君は真っ赤に染まった顔をそれでも逸らす事無く俺の方に向け、困惑したように口を開いた。 「俺……俺、どう、なっちゃった、の?」 「ナカで、とても感じてくれていたよ」  俺はありのままに彼の身に起こった事を端的に伝える。ひゅ、と息を呑んだ学君は、それから戸惑ったように俺を見上げた。手に受け止めた精液を彼に見せつけるように広げ、非常に勿体無かったがティッシュペーパーでしっかり拭き取る。ぽい、と近くのダストボックスに落とすと声が届いた。 「……ホント、に?」  思わず出たと言うような声だった。そこに喜色が含まれているのを感じて、俺も嬉しくなる。何度か汗を滴らせている額に唇を寄せ、それから、俺は口を開いた。 「ああ、本当だ。とても、綺麗だった。素敵だったよ。可愛らしくて、愛おしくて堪らないよ」 「要さん、喋り過ぎ……でも、その、良かった、かな……?」  途端に照れて唇を尖らせて不機嫌そうな声を出してみせる学君は、本当に可愛い。不安げに問うて来る瞳を舐めたいな、と思ったが、怖がらせるといけないので目蓋に唇を寄せるに止めて、俺は代わりに彼の耳朶を弄んだ。舐めてしゃぶってほんの少し噛み付くと、学君は甘い声を上げてくれた。髪に指を差し入れて乱すと、唇に唇を押し付ける。はあ、と思わず溜息が出た。 「そう、だね……学君がもう少し落ち着いたら、指を増やしても良いかい?」  彼の息は殆ど整っていたけど、俺の方が息が上がっていた。勿論、俺の陰茎は完全に勃ち上がってだらだらとカウパー液を零している。問い掛ける声が震えていない事だけが救いだ。 「うん……俺、要さんを、受け容れられる?」  それなのに、学君は無邪気に問い掛けて来る。未だ指二本しか受け入れていないのに無謀な発言だった。それでも、俺の下腹部が痛い程張り詰めたのは言うまでも無い。俺は苦笑を漏らしながら、こつん、と額を彼の額へ当てた。 「今直ぐは、ちょっと無理かもしれないけど……」 「何で、今は駄目なの?」 「ごめん。正直に言うと俺が保ちそうもないんだ、出来れば、学君の手で今直ぐイきたい」  格好悪い事この上無かったが、本当に俺は限界だった。学君が愛おしくて恋しくて可愛くて艶っぽくて、追い詰められていた。正直に口にして彼の手を俺自身に導くと、息を呑む音が聞こえる。 「……うん、俺の手で、良ければ、イって欲しい」  それから、一瞬の間が有って、学君はおずおずと申し出てくれる。有り難い返事だった。そっと彼の手を包み込むように自分の手を重ね、俺のペニスを握らせる。初めは戸惑うようにゆっくりだった動きは、やがて彼がいつも自分のペニスを扱くのだろう動きへと変わって行く。彼の動きは俺とは違って、亀頭は重点的に責めないらしい。竿をしっかりと捕らえぐいぐいと精液を強く絞り出すように動かされて俺のペニスは一気に快感を強めて行った。 「ああ、気持ち良いよ、学君、君の手は、本当に素晴らしいね。うん、あっ、もう少し、早く……」 「こう? 強くして、良い?」  問い掛けながら、学君は自分の手の中で俺のペニスが着実に変化を見せている事を分かっているのだろう、亀頭も含めて強く責めて来る。尿道を親指の腹で擦られて、ひくひくと腹筋が震えるのが分かった。俺は切羽詰まって、学君を抱き寄せると必死に奥歯を噛んだ。 「ああ、駄目だ、ああっ、保たないっ、はっ、くぅぅぅっ!!」  自分でも呆れてしまうくらい、早い絶頂だった。びゅくびゅくと学君の俺より小さな手の中に何度も精液を吐き出す。最後の一滴まで絞り出すように、けれど、優しく学君は手を動かし続けてくれていた。 「いっぱい、出たね……」  愛おしそうに俺の精液を見詰めてくれる学君が愛おしくて堪らなくて、俺は益々彼を抱き締めると、染めていない自然なままの彼の髪に唇を落とした。 「そうだね。学君がしてくれたからね」  だが、そのままでもいられない。ヘッドボードのティッシュボックスからティッシュペーパーを数枚取ると、丁寧に彼の手を拭った。それを先程と同じくダストボックスへと捨てると、学君は俺を見上げて来る。 「……要さん、あの、もう一回、さっきの、してくれる?」  小さな声だったが、欲の滲んだ可愛らしい声だった。俺は大きく頷いてみせる。 「勿論。何度でも、と言いたい所だけど、学君は三回ぐらいが限度かな?」 「うん。ごめん、体力無くて……」  恥ずかしそうに俯いて言う彼の顔を指で引き上げると、しっかりと瞳と瞳を合わせて、俺は笑ってみせた。戸惑ったように学君は唇を歪める。 「人には得手不得手と言う物が有るからね。良いんだ。今度は二人で、気持ち良くなろうか?」 「俺が、要さんの扱いて、んで、その……」 「俺が、学君のナカを指で、気持ち良くしてあげるよ……」  俺が言うと、学君も頷いてくれる。だから俺は飛び切りの声を彼の耳元で囁いて、今夜の続きを提案したのだった。  愛おしい、と言う気持ちは何物にも勝るのかもしれない、と隣で寝息を立てる恋人を見遣って俺は嘆息した。学君は、今夜も素敵だった。結局、粘ってはみたが最後まで行く事は出来なかった。彼の体力が保たなかったのだ。けれど、何度か極める彼を見て、共にイけて、良かったな、と思った。勿論、近い内には彼の初めてを貰いたいと思うけれど、今はこれで満足している。彼が負担に感じない程度に、進めて行けたら良い。実は、俺は、処女の相手は初めてだったのだけれど、こんなにも自分が我慢強いとは思ってもいなかった。衝撃の事実だ。  さら、と染めてない黒髪を梳いて、その髪に口付けを何度かすると、ふう、ともう一度満足の溜め息を吐いて、俺は彼を腕の中に抱き込んで、ゆっくりと目蓋を落とした。眠りは直ぐに遣って来た。

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