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第5話

『……ッんあ、やぁっ、はっ……ぁあん』 一層激しさを増している雨音に混じり、女の嬌声が響いていた。 テレビに映し出されているのは半裸にさせられ二人の男にヤられている女の映像。 俺は煙草を吸いながらそれを眺めていた。 ついさっきまで見ていたサスペンスドラマと変わらず興味などなく。 『……ひ、ァンっ、舐めないでぇっ』 女が拒絶する言葉を吐きながら股間を男の顔に擦りつけている。 「……あ、あの……先生……」 "涙と感動を誘うヒューマンドラマ"な映画が始まるはずなのに、なぜか始まったのはAV。 顔を赤くさせた遥は困惑したようにテレビから顔を背けていた。 「あの、これっ」 「鈴木な」 「え」 「複数プレイが好きなんだとさ」 「……」 「リアルじゃねーぞ。AVな」 乾いた笑みを浮かべて遥を見ると一瞬目があった。 だがそれはすぐに逸らされる。 「でもって巨乳フェチ。ほらこの女優、胸でかいだろ?」 煙草を持ったまま画面を指差す。 思わず見た遥は慌てたように再び顔を背けた。 「……せ、先生。あの……映画は」 「だから、これだろ? 鈴木のお気に入りの一枚。男二人に前と後ブッこまれてよがりまくってイイらしいぞ」 AVを見たことがないのか遥は耳まで赤く縮こまっている。 律儀に正座した膝の上に手を握りしめて軽くパニックになっているのがわかった。 「あいつさぁ、AVオタクなんだよ。爽やかそうな顔して変態だろ?」 「……」 「今日も見ながらヤってんじゃねーかな。―――彼女と」 紫煙を吐き出しながらまたひとつ情報を落としてやれば遥は肩を震わせて顔を上げた。 真っ赤に染まった顔がわずかに歪んでる。 「ああ、知らなかったか? あいつ彼女いるぞ。同棲中の」 抑揚なく、どうでもよく言えば遥は再び俯いた。 その様子に冷たい笑いが浮かぶのを感じる。 「残念だったな」 声にも冷たさがこもっているのも実感した。 ガタガタと窓が揺れる音と雨音と女の喘ぎ声がうるさい室内で沈黙が落ちる。 ―――え。 と、遥の消え入りそうな驚きの声が俺の耳に届いたのは少ししてからだった。 煙草を消し、立ち上がる。 身体を震わせ俺を見上げる遥と目が合う。 「お前、AV見るの初めてか?」 「……あ、あの」 混乱と戸惑いに半ば呆然としている遥がその顔に怯えを滲ませる。 そんなに俺の顔は怖くなってるんだろうか。 低い笑いをこぼせばさらに遥の顔が歪んだ。 「AV見たことねーの、って聞いてるんだけど」 俺を見上げる遥は何度も目をしばたたかせて、ようやく首を縦に振った。 「へぇ。お前、童貞だよな?」 俺が投げかける言葉に赤かった顔はどんどん青くなっていく。 そりゃそうだろう。 いきなりAVが始まり、俺からは意味のわからないことを聞かれ不安だよなぁ。 「澤野」 俺は笑って―――遥の肩を足で蹴飛ばした。 といってもそんなに強く蹴ったわけじゃない。 バランスを崩すくらいの強さだ。 遥は仰向けに倒れた。 「……せ、ん」 言葉は消え入りただ愕然とした遥の目が俺を映す。 肩を蹴った足をそのまま遥の脚の間へと下ろした。 「―――……勃ってんな。初めてのAVで興奮したか?」 足の裏に感じる確かな硬い感触に目を細め踵で踏む。 驚きすぎて目を見開いていた遥は我に返ったように突然動き出した。 俺の脚から逃げ、体勢を立て直そうとする背に再び蹴りを入れる。 そして床に沈んだ身体を跨ぎ、両手を縫いつけるように押さえつける。 「なんだ女でも勃つんだな。てっきり男しかダメなのかと思ってた」 「……なん…っ」 「あ? お前、鈴木のこと好きなんだろ?」 遥の顔が歪み信じられないものでも見るように俺を見つめる。 「気づいてないと思ってたか? バレバレだよ、お前。まぁ鈴木は馬鹿だから気づいてないけどな」 いまのこの状況をひとつも受け止めも理解もできずにいる遥に笑いがこみ上げる。 両手は塞がっている。 だから顔を近づけ、呆然と薄く開いた口を塞ぎ舌を差し込んだ。 激しく抵抗をしだした遥をねじ伏せたまま咥内を一舐めし、一旦唇を離す。 「……っ、なん、で……っ」 「澤野、お前さ」 血の気の失せた遥は小刻みに口を震わせていた。 ただひたすらに驚き、怯えている。 だからわかりやすいように教えてやった。 「お前、いまから俺に犯されるから」

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