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第6話

普段通りの声量で告げたその言葉は、外の暴風雨のせいで少し小さく響く。 遥は感情の抜け落ちたような顔をした。 許容範囲を超えたのか、理解不能すぎたのか。 俺の言葉の意味を理解するまで俺は黙って遥を眺めていた。 「……え……? え」 押さえつけた手から、その脈が激しくなっているのがわかる。 いまこの胸に耳をあてたらどれだけ速い鼓動が聞こえるんだろうか。 「噛むなよ」 どうやったって遥にこの状況を認識することなんてできるはずがない。 だから答えをまたずに再び唇を塞いだ。 「んんんーっ」 抵抗するのを無視し歯列を舐め、舌を絡めていく。 拒否するように逃げる舌を吸い上げながら―――右手を離した。 遥は自由になった片方の手に気づき俺の肩を押してくる。 だが貧弱なこいつが俺に勝てるはずがない。 そのまま咥内を貪りながら空いた手を遥の身体に這わせていく。 「……ッ! っん……ッ、ン!!」 下へと手を伸ばせばさっきは確かに硬かった感触がなくなっている。 そりゃ萎えて当然か、と胸の内で呟きながらそのままズボンの前を緩め中に手を差し込む。 最初から直に触れてやれば激しく身体が震え、俺の舌に激痛が走った。 「―――……ってぇ」 口の中で唾液に混じる鉄の味。 跨ったままでもう片方の手も解放し身体を起こす。 自分の指を舐めてみれば薄い赤が滲む。 「噛むなって、言ったろ」 ため息をつきながら見下ろすと遥は今にもこぼれそうなほど涙を溜めて身体を震わせていた。 自然と顔を寄せ、その目元に舌を這わせる。 白い肌にわずかについた血と、俺の舌に感じる塩味。 「澤野」 言葉もなく遥は呼ばれたことに反応し俺の方を震えながらちらちらと見る。 恐怖のあまり視線を合わせることもできないでいる様子に可哀想になと思う。 気の毒に。 可哀想に、 可哀想に―――……。 「俺、痛いの苦手だからもう噛むな。あと、お前も痛いのはイヤだろう? 俺も痛い想いはさせたくないから。わかるよな」 俺なんかに目をつけられたばかりに、こんな目にあって。 顔を強張らせる遥を眺めながら俺はソファのよこに置いておいた紙袋を手を伸ばしてとった。 そこから用意していたものを取り出す。 遥は"コレ"がなんなのかわからないらしい。 まぁ普通目にすることなんてないだろう。 ドラマで見かけるようなものとは違う、両手をひとくくりにまとめ拘束するための―――手錠。 呆然としすぎているのか力がはいらないのか俺に跨がれたままの遥が再び抵抗をはじめたのは―――それを片方遥の手にかけてからだった。

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