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第8話

粘り気のある白濁がついた手を遥の目の前に広げて見せる。 「気持ちよかったか? えらく溜まってたな。こんなに出たぞ」 大量に出たその液体は掌を滑り遥の頬にわずかに堕ちていった。 瞬間、ぐしゃり、と音でもしそうなくらいに遥の顔が歪む。 絶頂に達したはずなのにまるで正反対にその表情は絶望的だ。 いくつもの大粒の涙をこぼしながら遥は顔を背けた。 「……たっぷり時間はあるし、何回くらいイケるかな」 生臭い雄の匂いを放つ白濁を舐め取りながら俺が呟くと再び遥は身体を震わせた。 そして今度は遥のものに―――舌を這わせた。 *** 「や、やだ、せんせ、ッあ、ンン……ッ、も……やだ……っあ」 最初の射精からどれくらい経ったか。 相変わらず外は暴風雨で窓を揺らしている。 夜に似た昼下がり、遥は俺の咥内に3度目となる欲の証を吐き出す。 だんだんと量が少なくなってきた白濁を飲み込みながら遥に視線を向けると涙でグチャグチャになった顔を上気させている。 そこには相変わらず絶望と、そして諦めと、続けて吐精させられたことによる疲労を滲ませていた。 「ヤダじゃねーだろ。こんな立て続けにイッて気持ちいいだろう?」 萎えることを許さないように遥のものを掌で包み込んで優しく上下してやる。 遥は首を振ることしかしなかった。 拒絶の言葉と叫びは喘ぎよがりに混ざって、遥自身もう自分が何を言っているのかわかっていないのかもしれない。 真っ赤になった目はわずかに焦点がぶれている。 それでも小さい声で「いやだ」と呟く遥に、俺はその半身から手を離した。 手錠を入れておいた袋を引き寄せ中から一つ取り出す。 遥は今度もまた俺が手にしたものがなにかわからない様子で戸惑うように視線を揺らしていた。 「……遥」 俺がその目を見ると遥は身体を強張らせる。 何回もイかせてやったのに、怖いらしい。 そりゃ、そうか。 いくらイかせてやってもこの行為は遥の意思に沿ったものじゃない。 そしてこれからのことも。 一層こいつを怖がらせるだけ、だ。 それでも―――。 「じゃあ、次イクか」 俺は手にしたチューブを開け、脱力している遥の脚を割り開くとその中心にローションを落とした。 その冷たさにびくりと身体を震わせた遥は息を飲んで動きを止める。 指にもローションをまとわりつかせ、遥の後孔に指をあてがう。 なぞるように菊門を円を描くように触れ、指先を挿入させた。 「……ッ、ひ…っ」 揺れた瞳が俺を見て、大きく開く。 「心配しなくてもじっくりほぐしてやるよ」 浅く指を挿れたまま入口を広げるようにゆっくり動かす。 「……や、やだ……っ。やだっ」 新たな涙をこぼしながら首を振り、余力で俺から逃げようと再び抵抗をはじめる。 だが3度もイったんだ。 たいした力もなく、抑え込むのに労力はそんなに必要じゃなかった。 「心配しなくても、ちゃんと後でもイかせてやる」 ローションを押し込むようにしながら奥へと指を進める。 たった一本なのにきつく締めつける後孔。 「動けば痛い思いするのはお前だぞ、遥」 わざと途中でぐっと指を折り曲げる。 突然、といってもほんの少し押し広げられた肉壁に爪があたり遥の口から悲鳴がこぼれる。 すでにさっきまで何度もイった遥の半身は萎え切ってだらりと垂れ下がっていた。 「……っ……う」 目をきつくつぶり俺から顔を背ける遥。 「……なんで…っ」 なんで、なんでと、そればかりを繰り返す遥の後孔を犯す。 ローションを中に流すように増やしながらあえて音をたてながらほぐしていった。 肉壁に指の腹を這わせて擦りながら、探す。 泣き続ける遥はどうするだろうか。 新たな快感を知ったら。 「……う…っ、やだ……っひ、んっ」 指が硬い部分に当たった。それを確認して押すようにしながら擦ると遥の身体が跳ねた。 ゆっくりと刺激を与えていく。 そのたびに遥の口からは短い悲鳴のような喘ぎが漏れだしていた。 「っあ、……せ、ん……ッんあ」 「―――よかったな、遥」 いつの間にか涙を止め、身を捩っている遥の顔を覗き込んで後をほぐし続けながら俺と視線を合わせるように顎を抑える。 「ちゃんと後でも感じれるようじゃないか。気持ち、イイだろ? ココ」 前立腺っていうんだぞ、と聞きたくもないだろうことを教えてやる。 「ココ。射精するよりも―――イイらしいぞ」 俺の言葉に遥の顔が歪む。 だがその顔もまた歪んで――― 口から漏れる息は熱さを増していっていた。

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