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第17話
二回目は一回目よりも自分にたいしての絶望が大きかった。
先生に対する恐怖は消えることないけど、それより恐怖を感じながら何度も達した自分が怖かった。
先生の言った“淫乱”と言う言葉が頭から離れなくて、哀しくて次の週も恐怖に怯えて過ごして、三回四回と犯されて。
だけど先生との距離は相変わらずで。
学校ではまったく喋ることもないけど、決まって土曜日に犯される。
そんな生活に少しの変化が訪れたのは春休みに入る直前のことだった。
***
あと二日学校へ行けば春休みにはいるその日は水曜日。
終業式はちょうど金曜日だった。
学校からまっすぐ帰って部屋に引きこもってひたすら勉強だけして、ご飯を食べてお風呂に入って、リビングでジュースを飲んでた。
お父さんがテレビを見ていた。
それはサスペンスで、内容はありきたりなものだった。
喧嘩のすえに人を殺してしまった犯人が、それを目撃した知人に脅される、なんてありがちな内容。
『このことをバラされたくなかったら―――』
脅迫された犯人は相手を殺して……。
つまらなくて、話の途中で部屋に戻った。
最近の僕はもうなにも考えたくなくてお風呂から上がると早めに寝るようにしていて、その日もベッドにもぐりこんで目を閉じた。
「……」
いつもなかなか眠れない。
けど、その日はなんだかいつもと違うもやもやしたすっきりしない気分で寝付けなかった。
なんだろう。
―――先生のことだっていうことはわかる。
だってあの日から僕の思考は全部先生に拘束されてる。
怖くて、辛くてどうすればいいのかわからない日々。
友達といても家族といても、うまく笑うことができない。
僕を壊しているのは先生で。
だから今日も先生のことで眠れないんだけど―――……。
「……かな」
暗い部屋に呟きが落ちる。
自分で呟いたはずなのに、自分がなにを言ったのかすぐに忘れてしまう。
僕はいまなんて言った?
もやもやがひどくなって、そして脳裏にちらりと過るのはさっきリビングで見たサスペンスドラマ。
犯人は脅されて―――。
僕の状況とは全然違うけど、人に言えない秘密をネタに"脅されて"いたんだ。
「……先生は……」
なにも、言わない。
さっきからずっとひかっかっていたもの。違和感。
そう、だ。
先生は僕に……なにも、言っていなかった。
犯されるたびに卑猥な言葉や冷たい言葉を投げかけられるけど。
でも―――先生は僕を脅したことはない。
初めて犯された翌週も呼び出され、怖くて"何をされるかわからない"から、黙って従った。
けど、"脅迫"されたわけじゃない。
確かに先生の存在自体が怖かったけど――二度目三度目と僕を呼び出したときに強制する言葉を言ってきたわけじゃない。
"今から迎えに来る"
それが、脅迫?
もし、嫌だ、と言ったらどうなるんだろう。
怒る?
脅される?
なんとなく、そのどれもないような気がした。
でもどうしてそんな気がするのかわからなくて。
わからないまま考え続けているうちにいつのまにか眠ってしまってた。
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