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第27話
「うえーなにこれ。アメとかねーの」
「ない」
「つか、まじなにこれ先生」
「週末の宿題だ」
「は!?」
先生と里ちゃんのやり取りを聞きながら―――今日はもう金曜日なのだと気づいた。
会話に入れない、入る勇気もない僕は黙って用意されていたプリント類を持つ。
「……澤野」
「……っ、は、はいっ」
続いていたはずの会話。先生の声が不意に僕を呼んだ。
驚いて落としそうになったプリントを慌てて抱え込んで先生を見る。
一瞬、目があった。
「悪いが配っておいてくれ」
だけどすぐに逸らされながら続く言葉。
事務的でしかない声。
「……はい」
「里村も最後まで手伝えよ」
「はーい」
里ちゃんもプリントを持ってふたり準備室を後にした。
「なぁこれまじで宿題かな?」
「……さぁ、どうだろ」
「この量、宿題とかないだろ!?」
結局やっぱり先生は僕を見ない。
「……どうかな。もうすぐテストだし」
「あー。そういやそうだったなー。なー、じゃあもし宿題だったらテスト勉強がてら充も呼んでたまには真面目に勉強するか」
俺、日曜日用あるから明日は?
と、里ちゃんが言って。
「―――……ごめん。明日は用があるんだ」
そう、断っていた。
断る必要なんてないのに。
まだ"メール"は来てない。
まだ"予定"は入ってない。
もう"メール"は来ないかもしれない。
もう"予定"は入らないかもしれない。
なのに僕は週末に友達と遊ぶっていう約束を最近することができないでいた。
そして―――
その日の夜、携帯がメールを受信した。
『明日、大丈夫か』
短い言葉だけのメール。
だけど、僕は安心した。
外はまだ雨が降り続いている。
あの日の続きなら―――そのメールに安心なんてするはずも、する必要もないのに。
ほっとしてる自分がひどく滑稽で不思議でおかしいってわかってたけど、大丈夫です、とすぐに返信してた。
いつも思っていた。
先生はなんで僕を抱くのだろうと。
だけど最近いつも思う。
なんで、
僕は―――………。
―――――――
―――――
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