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第30話
週末先生と過ごして、そしてまた一週間が始まれば同じことの繰り返し。
「――さようなら」
週の途中、あっというまに時間は過ぎてぼんやりとしていた僕はHRが終わりため息をついた。
最近全然授業にも身が入らなくてぼーっとしてるうちに授業が終わってしまってることが多い。
ダメだなって思うけどどうしても授業に――何に対しても集中できなかった。
「せんせ~。ここ教えてー」
「私ここー!」
だけど敏感に反応してしまうことがある。
それは全部――集中できないことの裏返し。
教壇にいた先生のところに急いで向かった女子たちが先生を取り囲んで質問をしている。
よくある光景。
そんな光景に目を伏せてしまう僕。
どれだけ週末先生に抱かれても、学校が始まれば全部が夢だったような気がした。
僕は先生のそばに近づけない。
先生は僕を見ない。
もうそれは慣れることはないけれど僕と先生の中では当然のように保たれた距離。
週末先生に呼ばれてホッとしてしまう――どうにかしているとしか思えない自分。
先生に抱かれて全部埋め尽くされてる週末。
先生の視界にさえ入っているのかわからないのに僕の思考すべてを支配している平日。
女子たちが先生に質問を投げかけているのを僕は見ずに、だけどそのやり取りをしっかりと聞いてしまってる。
なんて女々しいんだろうって呆れてしまう。
そして自分に苛立ちながら―――先生の傍にいる女子たちにも苛立つ。
「――ハル」
僕が苛立つ必要なんてあるはずないのに。
「ハール!」
大きく耳元で響いた声に僕はハッとして顔を上げた。
僕を呼んでいたのは充くんで鞄を肩に担いで僕を見下ろしていた。
そのとなりには里ちゃんもいて、
「またボーっとしてる」
って笑っている。
「ご、ごめん」
「最近ほんっとぼーっとしてるなぁ。ところでさ、今からカラオケでも行かね?」
「……あ」
まだ帰る準備をなにもしてなかった僕は一瞬迷って、
「ごめん」
って謝った。
「今日は……」
「また図書館か?」
「う、うん」
「どうしたんだよ。テスト前でもないのに。ハル、勉強しすぎじゃねーの?」
里ちゃんが苦笑しながら言ってきて、僕もそれに苦笑で返す。
「……あの、ほら最近僕ぼーっとしてることが多いから……その分図書館で勉強して取り戻そうかなって」
「なんだそれ」
笑いながらも、
「しかたねーなー」
「今度行こうな」
充くんと里ちゃんは僕の下手な言い訳に頷いてくれた。
「うん。次は絶対行くよ」
「ああ。じゃーな」
「勉強しすぎて熱出すなよ」
ばいばい、と手を振って充くんたちは教室を出て行く。
僕はそれを見送ってため息をまたつくと帰り支度をはじめた。
いつのまにか先生の姿はない。
質問攻めはもう終わったのだろうか。
それとも移動したのかな。
気づけばまたため息がでそうになって、寸前のところで飲み込みながら鞄を手に席を立ち図書室に向かった。
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