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第38話

「ところで先生は? 先生も保健室ですか?」 この先には保健室しかないから効いてみたら鈴木先生は頷いて、僕の耳元に顔を近づけてきた。 「ココだけの話だぞ」 「はい?」 「実は二日酔いでさー。なんか薬貰って昼休み中昼寝させてもらおうと思ってな」 悪戯気に笑って見せる鈴木先生に僕はおかしくてつい吹き出してしまった。 「ゆっくり休んでください」 「おう。澤野ももうボールにぶつからないよう気をつけろよ」 「はい」 笑って鈴木先生と別れて僕は教室に戻ったのだった。 教室では里ちゃんたちに心配されて、ボールを投げたらしいクラスメイトに謝られたけど悪いのは僕だから逆に謝って。 「……なんかハル、頭打って頭に春でも来た?」 「保健室でいいことでもあったのか?」 昼休み中笑顔の僕に、里ちゃんたちに不思議そうに訊かれて僕は笑いながら首を振った。 本当のことは言えない。 僕と先生だけの秘密。 6時間目にある先生の授業が楽しみで、ずっと曇っていた僕の心は晴れやかで。 ふとみた外の天気もとても綺麗な青空だった。 それから昼休みが過ぎて5時間目の授業も終わって、教室にやってきた先生。 もちろん僕の方を見ることはない。 でもそれもよく考えてみれば先生が特定の生徒を見ているっていうことは変なことだし、誰かに気づかれたらまずいし。 それに僕に限らず先生が誰かを見つめてる、なんていうことはない。 淡々と進んでいく先生の授業。 いつもと変わらない光景なのに、久しぶりに集中して授業を受けれた。 たまにぼーっと先生を見つめてしまっていたけど。 保健室のほんのわずかな時間で僕のすべては変わってしまった。 先生の手を掴んで―――よかった。 なんでこんなにも嬉しいのか。 本当はもう―――……気付いてる。 ノートを取りながら、説明をしている先生の声を聞きながら早く週末にならないかなってそればかり考えてた。 週末が来て、先生と会ったら、どうしよう? たまには僕がお昼ご飯を作ってあげたい。 いつもいつも僕ばかり触れられてるから―――なにか先生にしてあげたい。 少しでもいいから、僕の中の変化を先生に知ってほしい。 週末が待ち遠しくて、早く僕の知ってる先生に会いたくて身体だけじゃなくて心も疼いてしかたなかった。 そうしてその日は終わって。 次の日、金曜日が来て。 あっという間に一日は過ぎていった。 馬鹿みたいに浮かれていた僕。 まるでなにも問題なんてないみたいに考えてた僕。 そんな僕を嘲笑うかのように―――金曜日も、土曜日も。 僕の携帯に先生から連絡が入ることはなかった。 ***

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