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第39話
―――なんで、連絡がないんだろう。
金曜の夜、ずっとずっと連絡を待っていた。
いつもなら鳴るはずの時間になっても僕の携帯が着信を告げることはなかった。
でも金曜の夜はまだマシだった。
もしかしたら先生も忙しいんだし疲れて寝てしまったのかもしれないとか友達と飲みに行ってるのかもしれない、そう思えたから。
携帯を握ったまま先生からの電話を待っていた僕はベッドでいつの間にか眠っていて次の朝目が覚めて着信履歴を見ても先生の名前がないことにがっかりした。
メールもなにも入っていなくて朝からずっと不安になって。
そしていつもなら先生が迎えに来てくれる時間になっても携帯が鳴ることはなかった。
「……どうしたんだろ」
ベッドに座り込んで先生の名前を携帯に表示させる。
ここ数カ月連絡がないってことなんてなかった。
どうしたんだろう、ってずっと思いながら時間だけが過ぎていく。
「今日はでかけないの?」
「……うん。あ、もしかしたら後で出かけるかも……しれない。わからないけど」
久しぶりに土曜の昼間、家にいる僕に母さんとお昼を食べながら訊かれた問い。
先生から電話がかかってくるかもしれないって可能性はまだないわけじゃないから一応出かけるかもなんて言ったけど―――。
結局、夜になっても電話がかかってくることはなかった。
「……先生」
何度も先生の名前を携帯に表示させて、メールの作成画面を表示させた。
だけど発信ボタンを押すことはできなくて、メールも送信ボタンを押すことはなく削除して。
ずっとその繰り返しだった。
なにもすることなく無駄に土曜日は終わってしまい。
日曜日になって。
僕はなんの連絡もないのに着替えると家を出て―――先生の家へと向かった。
いつもは車で通る道を歩くのはとても新鮮だった。
だからといって気分は晴れることはなかったけど。
先生から連絡がない理由がわからない。
思い当たることと言えば保健室の一件だった。
僕から先生の手を掴んだことを―――先生は本当は怒っていた?
……そんなことはないはず。
ベッドの傍から離れていったとき、あの一瞬先生は僕を見て―――『土曜日』って口だけを動かした。
はっきりと言われたわけじゃないけど、確かにそう動いた唇。
だから、だから怒ってるなんてことはないはず。
でもだから、なぜ連絡がないのかがわからなかった。
もしかして病気?
不安が募っていく中、ようやく先生の住むアパートが視界に映る。
実際自分の目で捉えて僕は足を止めた。
連絡もなにもしないでここまで来てしまったけどあそこまで行ってドアをノックする勇気がなかった。
もし来客中だったり忙しかったらって考えてしまうし。
やっぱりメールだけでも送ったほうがいいのかな。
携帯を取り出して家にいたときと同じようにメールを起動しては消すを繰り返す。
日曜の昼、道の真ん中で立ちつくしている僕はきっと周りからみたら怪しいだろう。
たまに通り過ぎるひとたちに視線を送られるのを感じて少し先にあったコンビニまで戻るか、それともアパートまで行ってみるか悩んだ。
迷ったままのろのろと足を動かし前へと進む。
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