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第51話

日々なんてものは、仕事して飯食って、寝て、それだけしていればあっという間に過ぎていく。 遥が毎日俺を見つめていようが、なにか言いたげにしていようが俺とあいつは教師と生徒でしかなく、学校でその関係以外の会話なんてあるはずもない。 もとより二人きりになるつもりもない。 教師として接したとしても一日に一言二言交わすくらい。 そうしていけばいつかあいつも元に戻るだろう。 いや―――思い出すだろう。 俺に犯される前の日々を。 「俺一度家帰ってから行くけど、お前どうする?」 金曜日、鈴木が壁時計を眺めながら背広を羽織った。 「……どうする、って……。なにがだよ」 「なにがって、お前なー! この前言っただろ? 飲みに行くって! 可愛い子紹介してやるっつっただろ!!」 「行くって言ってないだろ」 「行かないとも言ってねーぞ! ていうことは行くっていうことなんだよ。もうお前頭数入ってるから。同僚連れていくって言ってるから。時間は7時から、場所はメールしておくからな。遅れるなよ! それまでは好きに仕事してろ。じゃーな」 勝手なことほざいて鈴木は準備室を出ていった。 思わずため息が出る。 確かに飲みに行くから来いって誘われたとき行かないとは言わなかった。 話自体を無視していたからだ。 「……めんどくせー……」 ぼそり呟いて行くか行かないかを考えもせず仕事に没頭した。 *** 「おっせーよ! 葛城!!」 現在七時半、居酒屋。 店員に案内されてきた俺を見て生ビール片手に鈴木が呆れたように叫んできた。 4人掛けのテーブルで鈴木の隣にショートカットの女。そしてその前にセミロングの女がひとり。 年は同じくらいか。 会釈しつつ、 「すみません。仕事がなかなか終わらなくて」 と適当に言う。 来るつもりもなかった酒の席。 放課後何も考えず仕事していれば6時半に電話が鳴った。 それは鈴木からで、メール見たかという内容で、見てないと言えば見ろと言われ、いいから来い、とうるさく連呼された。 電話を切ったあとでメールが数回来て、そのしつこさに集中力が途切れた。 『巨乳来るから来い!!』 そんなメールを眺め、一服して―――ここへ来た。 別に巨乳にひかれたとかじゃない。 ただ―――……。 「こんばんは。鈴木とは大学が一緒だった坂口かなこです。こっちの子は」 ショートカットの女はさばさばとした雰囲気で自ら名乗り、俺の隣にいる女へと目配せした。 「私は水野です。水野繭莉。よろしくお願いしましす」 「繭莉ちゃん可愛いだろー。彼氏募集中なんだって。あー俺もカノジョいなきゃなー」 「あんた、エリにチクるよ」 坂口という女は鈴木のカノジョとも面識があるらしく、坂口が言えば「どうぞどうぞ。お好きにどうぞ」と鈴木は気にした様子もなく煙草をふかしている。 そして、彼氏募集中らしい女は―――。 「お仕事お疲れ様です。飲み物なんにします? 生ビール?」 女の子らしいメイクと雰囲気をしていて、鈴木の言うように巨乳で。 「……はい」 甘い香水のにおいがした。

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