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第57話
【土曜、2時ごろうちに来い】
送ったメールの内容はそれだけだった。
鈴木から"頼み"を受けた翌週の土曜が指定された日になった。
ちょうど夏休み初日。
そのほうがいろいろと好都合だろうという―――大人の都合。
『おい……明日でいいんだな』
『おー! ちゃんと遥ちゃんに連絡したか? あ、そういや俺手ぶらでいいんだよな? おまえんちに全部そろってんだろ? 一応男同士のやり方ちゃんと調べたんだからな』
口を歪めて心底楽しみだと言わんばかりの鈴木に俺は頷くだけの返事をした。
なんで俺の家なんだって最後まで思ったが、ホテルに連れ込むよりも、彼女持ちの鈴木の家に連れ込むよりも俺の家が一番マシだろと鈴木が拒否権はないとばかりに言ったからしょうがない。
明日が楽しみだと笑っていた鈴木はノンケで彼女がいるのに、なぜわざわざ男それも生徒に手を出そうと思うのか理解できない。
【はい】
たったひとことのメール。
それをすぐに送り返してきた遥の気持ちも理解できない。
まだ午前中だが冷蔵庫からビールを出し、そのままキッチンでプルタブを引き一気に飲み干す。
外はあの日とは真逆の晴天。
眩しい朝日は俺の部屋を明るく照らしていた。
それも数時間後には遮光カーテンで暗くなる。
閉め切られた部屋でなにが行われて、あいつがどんな反応をするのか。
俺には、関係ない。
***
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