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第68話

唇から伝わる体温。 触れるだけのキスを数秒続けて離れる。 頬を染めた遥を見つめているとゆっくりと瞼を上げ、視線が絡みあう。 そんな些細なことに満たされるのを感じて、ふと自然と笑みが浮ぶ。 それに対して遥は怪訝そうに視線を泳がせた。 「どうした?」 「……えっ」 何か言いたいことでもあるのかと遥の頭を撫でると、遥はちらちらと目を伏せては俺を見るを繰り返す。 「なんだよ。言え」 もう一度訊けば遥はこれ以上どう赤くなるんだろうというくらいに赤さをまして聞きとれないくらいの呟きをこぼした。 「なに?」 「……ス」 「す?」 「……キス……が」 キス? いやだったってことか? いや違うな。なんだ? 内心首を傾げてれば―――あれで終わりなのかな……って―――とぼそぼそとした遥の声が聞こえてくる。 あれで終わりって、キスのことか? 予想していなかった言葉に、怪訝に遥の顔をじっと見つめてしまう。 「……誘ってんのか?」 「ちがっ……わない、です」 「―――は」 またもや予想していない答えに虚をつかれる。 遥は恥ずかしそうに視線を揺らしながらも俺を見つめ返し、そっと距離を狭めた。 遥からのキス。 ぎこちなく触れて、ぬるっと舌が触れて。 俺にしがみつく手が緊張にか震えているのが伝わってくる。 驚きとともに俺の中の熱情が引きずりだされていく。 「んっ、っ!」 煽られるまま遥の咥内に舌を滑り込ませると舌に絡みつかせ貪るようにキスを交わした。 こうしてキスするのはいつ以来だろう。 準備室で手酷く遥を抱いたときにはしなかったキス。 保健室でしたのが最後だった。 あの日も遥からがきっかけで―――、だけどあのときといまとは同じようで違う。 俺の舌の動きに必死でついてこようとする遥。 身体も唇も舌も、俺より少し小さいそれを食むように吸い上げて甘噛みすると身体を震わせながら一層密着してくる。 舌が交り合うだけで全部が熱に奪われるように、快感に支配されてしまう。 ときおり漏れ聞こえる水音と遥の吐息に終わることがないようなキスを続けてると繋がってないのに繋がってる気さえしてきた。 どうしようもないくらいに昂ぶっている熱を押し当てれば同じようになっている遥のものとズボン越しに擦れる。 「……ん、っふ……ぁ」 途端遥の甘い声が耳を打ち、腰を強く引き寄せる。 着衣してるのがもどかしい、数ミリの距離。 触れられなかった、もう触れることなんてないと思っていた分、この熱が苦しいくらいに俺を煽って理性を吹き飛ばさせる。 このまますぐに遥の中に身を埋めたくなる。 もっと甘く乱れる遥の声を引きずり出したい。 名残惜しさを感じながら一旦唇を離す。 うるみきった遥の目がぼんやりと俺を映していた。 普段は大人しくなにも知らない風な遥の表情がいまは艶めかしく色欲に濡れている。 「つかまってろ」 このまま押し倒したくなりながらも遥に声をかけ、きょとんとした遥を抱きあげてソファから立つと隣の寝室へと向かった。 華奢な見た目のままに軽い身体。 以前よりもさらに痩せたように感じて、それは俺のせいだろうかと考えながら遥をベッドに下ろした。 俺に視線をとめたままの遥の服をはぎとりやっぱり痩せたと実感する肌に指を滑らせる。 ズボンにも手をかけるとわずかに遥が身じろいだが抵抗することもなくすべてを脱がせた。 「……っ、あの」 恥ずかしげに手で隠そうとするのを掴んで、キスだけで勃ちあがっていた遥の半身に触れた。

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