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出版記念パーティーの夜(2)(side 凪桜)
パーティーでも居酒屋でもあまり食べてなかったよな、真誠さん。サイゼリヤならきっと気楽に食事できるだろう。あまり人と接するのは得意じゃないのに、パーティーなんてかなり疲れてるはずだ。
「なんにする?」
僕は真誠さんとメニューを開いたけれど、お互い既に食べたいものは決まっているようだったのでオーダーして、やっと目を合わせることができた。
「お疲れさまでした。ドリンク取ってこようか?」
真誠さんは少し考えて
「ジンジャーエールで」
僕はトニックウォーターにしよう。
ドリンクバーへ行くとオススメのポップがあって楽しい。
「なんかミックスして飲めるらしいよ。面白いね」
「次は自分で行くよ。ミックスしたい!」
そう言うと真誠さんはスマホで何か調べ出した。飲み物のミックスの情報を探して、なるほどーなどと言っている。きっと部屋でも独り言いってるんだろうなぁと思うとその姿や口ぶりを想像してしまう。
楽しそうにしてるけど、なかなか目を合わせてくれないな。
注文の品が運ばれてくると真誠さんはコーンとグリンピースの付け合わせからグリーンピースだけを一粒一粒フォークで器用に取り出してペペロンチーノに入れだした。
そしてそれが終わるとチキンソテーを細かく、一口よりももっと小さく切ってまたペペロンチーノの皿へ移していく。
僕は自分の前にあるモッツアレラチーズを半分に切って口に入れながらその楽しそうな様子を眺めた。
真剣に作業をしてます! という感じで目が離せなくなってしまった。その間はもちろん無言。
そしてチキンのソースをパスタにかけると混ぜはじめたので、作業終了かな。
僕はアラビアータの逃げるエリコイダーリを突き刺しながら
「真誠さんはひとりでもサイゼリヤに来るんだね」
と、声を発してみた。
真誠さんは、ハッと我に返ったように
「あ……うん、わりとよく食べに行く」
そう言ってパスタとチキンを混ぜたものを口に入れた。
なんだか具を混ぜてしまう食べ方がすごく面白くて、子どもみたいに真剣で僕はニヤニヤとしてしまいそうな口をこぶしで押さえた。
「僕もよく行くんだ、うちからわりと近いから」
「美味いよな、ここ」
「食べ慣れた味っていいよね」
たわいもないこんな会話ができるとは思ってなかった。
会うのは二回目、あとは文通。
僕たちの関係はとても不思議だ。
「ドリンク取ってくる」
そう言って立ち上がった真誠さんは、やっぱり目を合わせない。ネットで見つけたドリンクのブレンドをやってみたと戻ってきたので交代で席を立つ。
カプチーノを持って戻ると僕は
「一口飲ませて」
と、真誠さんの隣に座った。
「え?!」
僕から上半身が遠ざかっていくのに構わず、コップを手にして一口飲んだ。
「美味しいね」
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